再会したクールな皮膚科ドクターは、元・売れっ娘キャバ嬢をまるごと愛で包み込む
そのため食後の血糖値が上がらず低血糖が持続するため、決められた時間に自分で注射を打ってインスリンを投与しなければならない。

池田さんは初め総合病院へ通院しインスリン処方をされていたのだけれど、高齢になり通院が困難となって、開業医である当院への通院を始めた。

しっかりと通院していたため症状も安定していて、開業医への紹介が許可されたそう。
まぁ、中にはコンプライアンスが悪い患者さんもいるからね。


「池田さん、今日は480円です。注射は、院外の薬局でもらってくださいね」

「おう、いつもありがとな。また来月も来るから」


診療明細書に記載してある料金をトレイに置いた池田さんは、片手を上げてひらひらと手を振りながらクリニックを出て行く。

これも、いつもの光景。
それに『また来月も来るから』という患者さんの一言が、ちょっと嬉しかったりもする。

だって……いつものように『また会える』というのは当たり前のことじゃないもの。
それを『また来るよ』と、当然のように言ってくれるのは嬉しいことだ。


「あー! 終わった!」

「疲れましたね」


両手を挙げて「んー!!」と伸びをしながら、ほっとした様子の安達さん。あんなにたくさんいた患者さんもいなくなって、午前中の診察が終了した。
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