再会したクールな皮膚科ドクターは、元・売れっ娘キャバ嬢をまるごと愛で包み込む
とはいえ、午後の診察も控えている。

診療時間は14時から。
それまでに食事を済ませて、夕食の下ごしらえをしておきたい。


「それじゃあ、お先に休憩行くよ」

「はい。お疲れ様です」


受付カウンターの下に忍ばせているバックを持った安達さんは、看護師さんたちにも「お疲れ様です」と声を掛けながらクリニックを出て行ってしまった。

休憩時間はだいたいみんな帰宅したりする人が多く、クリニックは静かになる。
受付の片付けを済ませて行こうかな、と思ったとき。


「西野さん、お疲れ様です」


背後から名前を呼ばれて、驚いて振り向いた。

私の後ろに立っていたのは、優太先生。
診察を終え、先生方もそろそろ休憩に入るころだったのだろうか。


「優太先生、お疲れ様でした。まだ午後もありますけど」

「あぁ。それにしても、最近は多いね。発熱患者」

「そうですね。8割が流行りの感染症ですもんね」


「疲れますよね」と、作業をしながら優太先生と軽く会話を交わす。
ある程度片付けが終わって、私もバッグを手にしたときだった。


「西野さん、明日の診察が終わってから、食事に付き合ってくれない?」

「はい?」


しまった。間抜けな声を発してしまった。

あまりにも突然すぎる優太先生の発言に、大きく目を見開く。
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