山寺兄弟の深すぎる愛
スタスタと祭理の部屋に向かう、虎空。
部屋に入るなり、ベッド脇に腰かけた。

祭理の頬に触れる。
虎空の表情は、先程の風龍に向けた顔とは比べ物にならないくらい甘い。

「良かった…体調落ち着いて……」
安心したように息を吐く。

すると祭理の瞼が震えて、ゆっくり目を開けた。

「んん…」
「あ…ごめんね、起こしちゃった…」

「ん…クウちゃ……」

「うん。体調どう?」
ゆっくり起き上がろうとする祭理を支えるようにして、座り直した。
腰を抱いて、優しく背中をさする。

「大丈夫だよ。クウちゃんとフウちゃんのおかげで、スッゴク楽になった!」

「良かった!」
今度は、頭を撫でた。

そこにノックの音がして、風龍が入ってきた。
「あ、良かった!起きてた!」
「フウちゃん」

「ココア入れて来た。飲むだろ?」

「うん。ありがとう!」
微笑みベッド脇に腰かけた風龍が、祭理に“M”のイニシャルのプリントされたマグカップを渡す。
風龍も自身の“F”のイニシャルのプリントされたマグカップに口をつけた。

祭理も飲もうとして、気づく。
「あれ?クウちゃんは?」

「は?クウ、いんの?」
“なんで俺がお前に入れてあげないとならねぇんだよ!?”と言うような視線。

「…………別に。僕はいらないよ」
そう言って、風龍を鋭い視線で見る。

そんな二人の鋭い視線の間に挟まれ、祭理がおずおずと虎空にマグカップを渡そうとする。
「私はいいから、クウちゃんどうぞ?」

「は?祭理、何やってんだよ!?
俺は、祭理のために入れたの!!」

「でも、クウちゃんの分…」

「祭理、大丈夫だよ!
僕は本当にいらないから!
気持ちだけ貰うね!ありがとう!」

安心させるように微笑む虎空。
その表情は、とても甘く優しい。
祭理は頷き、一口飲んだ。

「ん…美味しい…!」
「良かった!」

「ありがとう、フウちゃん」
「ん!」
祭理が微笑むと、風龍も微笑む。
虎空と同じく、風龍の表情も甘く優しい。

「クウちゃん、一口飲まない?美味しいよ?」
「いいの?」

「もちろん!どうぞ?」
「フフ…ありがとう!」

「おい!クウ!」
「え?だって……“不可抗力”だよね?」
意味深に微笑み、祭理のマグカップに口をつけた。

━━━━━しかも、祭理が口をつけた場所に。
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