寝顔
「博美はさぁ、すげえ気が強い分、しっかりした芯の強さも持ってるから、一緒にいて凄く安心出来るんだ」
「安心……?」
訳がわからない、というような表情で博美に聞き返され、絢斗に照れの感情が湧き上がる。
「浮気……とか」
「え?」
「博美もわかってるはずだけど、俺は冴えない男だ」
博美は首を横に振っているが、それは絢斗自身が一番よくわかっていることだ。
「博美みたいな彼女を持ったら、普通なら浮気の心配とかするもんだけど、俺は一度もしたことがないんだ」
絢斗の言葉に、何故か博美は嬉しそうな表情を浮かべている。
「それは、いつも博美の真っ直ぐな気持ちが伝わってたから」
「そっか……良かった」
そう口にしてはにかむ博美が愛おし過ぎて、絢斗は場所もわきまえず、博美に熱く口付けた。
「付き合う前には見たことがなかった博美の弱い部分を見た時、俺に心を許してくれたのかなって思ってすげえ嬉しかった」
溢れだした博美への思いを、絢斗は包み隠さず伝えていく。
「絶妙なタイミングで甘えてきたり、頼ってきたり、博美はこんな俺の男としての自尊心も満たしてくれる」
「うーん……それはよくわかんないけど」
「うん、わかんなくていいんだ。多分それが素の博美なんだと思う。俺は、そのままの博美が好きなんだ」
真っ直ぐに見据えた博美の瞳に、見る見るうちに涙が溜まる。
「博美が俺を好きになってくれたことは、俺からすれば奇跡みたいなもんだけど、俺が博美に惚れるのは、至極当然のことなんだ。焼きもちばっかり焼く博美が可愛くて仕方ないし、真っ直ぐに気持ちを伝えてくれる博美が好きで好きで堪らないんだ。だから……心配なんかしなくても大丈夫だ」
博美を抱きかかえて部屋に入れると、堰を切ったように大きな声で泣き出した。あの日のように強く抱きしめてみたが、今回はどうしても泣き止まない。
困り果てた絢斗は、ソファーに座らせた博美に寄り添って頭を撫で続けることしか出来なかった。
やがて博美は安心したのか泣き疲れたのか、絢斗の手を握ったままソファーで眠ってしまった。
絢斗はほっと胸を撫で下ろし、博美の濡れた頬を優しく指で拭った後、起こさないようにそっと毛布を掛けた。それから照明を少し落として、いつものように愛おしい博美の寝顔を見つめた。
静けさの中で、博美の顔をフラッシュが照らす。
絢斗はスマホ画面を見つめてタップした。
『アルバムに追加しました』
【完】
「安心……?」
訳がわからない、というような表情で博美に聞き返され、絢斗に照れの感情が湧き上がる。
「浮気……とか」
「え?」
「博美もわかってるはずだけど、俺は冴えない男だ」
博美は首を横に振っているが、それは絢斗自身が一番よくわかっていることだ。
「博美みたいな彼女を持ったら、普通なら浮気の心配とかするもんだけど、俺は一度もしたことがないんだ」
絢斗の言葉に、何故か博美は嬉しそうな表情を浮かべている。
「それは、いつも博美の真っ直ぐな気持ちが伝わってたから」
「そっか……良かった」
そう口にしてはにかむ博美が愛おし過ぎて、絢斗は場所もわきまえず、博美に熱く口付けた。
「付き合う前には見たことがなかった博美の弱い部分を見た時、俺に心を許してくれたのかなって思ってすげえ嬉しかった」
溢れだした博美への思いを、絢斗は包み隠さず伝えていく。
「絶妙なタイミングで甘えてきたり、頼ってきたり、博美はこんな俺の男としての自尊心も満たしてくれる」
「うーん……それはよくわかんないけど」
「うん、わかんなくていいんだ。多分それが素の博美なんだと思う。俺は、そのままの博美が好きなんだ」
真っ直ぐに見据えた博美の瞳に、見る見るうちに涙が溜まる。
「博美が俺を好きになってくれたことは、俺からすれば奇跡みたいなもんだけど、俺が博美に惚れるのは、至極当然のことなんだ。焼きもちばっかり焼く博美が可愛くて仕方ないし、真っ直ぐに気持ちを伝えてくれる博美が好きで好きで堪らないんだ。だから……心配なんかしなくても大丈夫だ」
博美を抱きかかえて部屋に入れると、堰を切ったように大きな声で泣き出した。あの日のように強く抱きしめてみたが、今回はどうしても泣き止まない。
困り果てた絢斗は、ソファーに座らせた博美に寄り添って頭を撫で続けることしか出来なかった。
やがて博美は安心したのか泣き疲れたのか、絢斗の手を握ったままソファーで眠ってしまった。
絢斗はほっと胸を撫で下ろし、博美の濡れた頬を優しく指で拭った後、起こさないようにそっと毛布を掛けた。それから照明を少し落として、いつものように愛おしい博美の寝顔を見つめた。
静けさの中で、博美の顔をフラッシュが照らす。
絢斗はスマホ画面を見つめてタップした。
『アルバムに追加しました』
【完】