利瀬くんの甘さに溺れたら
プロローグ

「利瀬くーん、そこにある生地取ってくれない?」



「えーっと……これ?で合ってる?」



「そうそう!ごめんね、ありがとう!」



「どういたしまして」



男の子と放課後の教室に二人きり、っていうシチュエーション。



何かあるかも…?なんて、変に意識していたあの時期が恥ずかしい。



ミシンを使ってカタカタと作業をしながら、少しだけ前の自分を思い出して一人で顔を赤らめる。



…って、だめだめ!今は集中しなきゃ!



余所見でもして怪我をしたら、利瀬くんに迷惑かけちゃうもん。



それだけは避けないと!



もう一度手元の生地に集中し、作業を続けること数分。



…うーん、これでいいかな?



「利瀬くん、こんな感じでどう?このリボンの部分、もうちょっと手を加えた方がいい?」



「…………」



…む、無言は一番辛いって…!!



邪魔じゃなさそうなタイミングを見計らって声をかけると、利瀬くんは何も言わずに掲げたたリボンをじーっと見つめるだけ。



ダメならダメとハッキリ言ってくれればいいのに…。



内心ムスッとしていたら、スクリと立ち上がった利瀬くんがこちらにずんずん向かってきた。
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