利瀬くんの甘さに溺れたら
メモにびっしり書かれた買い出しの品の数々を見てびっくり仰天。
何故これを二人だけで大丈夫だと思ったのか、今更ながら不思議である。
「仕方ないんじゃない?結構押してるし、二人が限界だったんだと思う」
「う〜…それもそうだけどー…」
客観的に見て話す利瀬くんが、珍しくまともに見える。
…って、これはさすがに失礼か。
下駄箱に向かいながら廊下を進んでいくと、色んなクラスが文化祭の準備をしている風景が見れる。
この非日常感がなんともたまらないなぁと感じながら歩いていたら、不意に利瀬くんが呟いた。
「…佐藤さんは、俺と行くの嫌だった?」
とても小さくて、周りがもう少し騒がしかったら聞き取れなかったかもしれない。
それでもなんとか拾い上げて…その上で、困惑した。
「な…んで。そう、思ったの…?」
「………」
俯く利瀬くんが今何を考えて、何を思っているのか。
全然わからなくて……怖い。
利瀬くんから返答が返ってこないまま下駄箱に着き、今度は外に出て校門へと向かう。