利瀬くんの甘さに溺れたら

ど…どうしよう…。



校門に立っていた先生に外出許可証を提出して、一応「行ってきます」と手を振ったけど。



学校という境界線を飛び越えても、利瀬くんは黙り込んでいる。



やっぱり、さっき聞き返すべきじゃなかったんだ。



「そんなことないよ」って、「利瀬くんと行けて嬉しいよ」って…素直に言えばよかったのに。



今さら後悔したって仕方がないけれど、どうしたって思ってしまう。



しばらく互いに無言状態で歩いていたら、目的地がだんだんと近くなっていることに気がついた。



この気まずい空気の中買い出しするのかな…と、かなり不安になっていたら。



「…俺、さっき酷いこと思っちゃったんだ」



ようやく利瀬くんが口を開いてくれて、ひとまず安心。



「酷いこと?」



って、なんだろう…?



それは、私に対してという事に違いない。



利瀬くんの言う「酷いこと」というのはどういうことを指すのか、ある意味興味を持って言葉を待っていたのに。



「佐藤さんと二人で来れて良かった、って…思っちゃったんだよ」



言葉を失った。
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