利瀬くんの甘さに溺れたら

「…っ、え?」



自分に都合のいいことを言われて、もしかしたら幻聴が聞こえてしまったのかもしれないとも思った。



未だに困惑している私に構わず、利瀬くんはそのまま話し続ける。



だから…幻聴じゃないって、わかったんだ。



「校外で佐藤さんと出かけたことってなかったでしょ?だから…なんか、特別な気がして。もし佐藤さんが他の人と行ってたら、気になって衣装作りどころじゃなかったと思うし」



嬉しそうに顔をほころばせてから、眉根を寄せて不満げな表情になるその一連の変化。



「っ…そ、それは…その、嘘じゃなくて?」



「そんな嘘ついてどうするの。今のは…全部、俺の本音だよ。佐藤さんが僕以外の誰かとこうして歩いてるところを想像して、嫉妬までしたんだから」



「っ…!!」



「本音」と「嫉妬」というワードが利瀬くんから私に向けられているということが重なって、「嬉しい」とかいう言葉じゃ片付けられないくらいの喜びが全身を駆け巡る。



そんな私とは逆に、利瀬くんはまだモヤモヤとした顔をして苦笑した。



「ね、酷いでしょ。だからなんか、申し訳なくなって───」



「酷いなんて思うわけないよっ!!」
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