利瀬くんの甘さに溺れたら
顔がボンッと音を上げた。
「…って、呼んじゃダメ?」
首をこてんと傾げる利瀬くんの可愛さといったらない。
いつも淡々としている利瀬くんだけれど、だからこそのギャップというか。
目の前にいる生物がとにかく可愛すぎて、私は悶え苦しんでしまう。
「〜っだ、ダメじゃない、けど…」
そんな捨てられた子犬みたいな顔で言われたら、誰だって頷いちゃうよ…!
なんてことは言えるはずもなく。
「……またどうして、そんな急に?」
一旦落ち着きを取り戻して問いかける。
目当ての手芸屋さんがあったから、中に入ってから聞いてみた。
「なんとなく呼びたくなったんだよね」
「なんとなく……」
「そう。なんとなく」
……………。
まぁ、そうだよね。
だって利瀬くんだし。
うん、これが利瀬くんの通常運転だ。
「…それで、いいの?瑠々って呼んでも」
これで名前呼びは二回目なのに、やっぱりまだまだ慣れてはくれない。
たかが名前くらいで…と思われるかもしれないけど、私にとっては一大事なのだ。