利瀬くんの甘さに溺れたら
目がずっと泳いでいて全く合わないし、心なしか落ち着きがないように見える。
なーんて、私の気のせいか。
「細かいところなら時間もかからないし大丈夫そうかな?えっと、私今からトイレに行こうと思っててね、少し待っててもらえると…」
でも、普通にトイレに行きたくなってきて、杏奈ちゃんに待っててもらえるか聞こうとしたら。
「り、利瀬くんもいるんだよね?」
「えっ…?」
突然利瀬くんの名前が出てきて、今度は私が動揺してしまった。
まだ話している途中だったのに、それを遮ってまで利瀬くんの名前を出てきたことが衝撃的で。
杏奈ちゃんは優しく温厚で、人の話を遮ることはまず無い。
苗字の関係で出席番号が近いということもあり、話す機会が多かったからなおさら不思議に思った。
「…うん、いるよ!たしかに、利瀬くんに話せばいい話だったね?」
私…ちゃんと笑顔作れてる?
「利瀬くんなら、今はそこまで大変な作業はしてないし声掛けて大丈夫だと思うよ!」
無理やり笑顔を貼り付けて平然を装うけど、これがまた難しい。
心の中がザワついて、口角が上手く上がってくれない。