利瀬くんの甘さに溺れたら
「そう…?じゃあ、伝えてくる…!ありがとう、瑠々ちゃん」
嬉しそうに微笑む彼女は、今どんな気持ちで笑っているんだろう。
「っ、うん。それじゃあまたね…!」
結局、最後は私も杏奈ちゃんと目を合わせられなくて、小走りでトイレに向かった。
一番近いところじゃなくて、わざと遠い場所を選び個室に逃げ込む。
「……っ可愛かったなぁ、杏奈ちゃん…」
教室に入る前に見せた、妙に不自然な態度。
普段は大人しい彼女から出てきた利瀬くんの名前。
杏奈ちゃんの嬉しそうなあの笑顔。
…全ての点と点が繋がった気がした。
あんなに可愛い美少女が、利瀬くんを好きなんだ…って、そう思うだけでも苦しくなる。
だって、杏奈ちゃんと私じゃ比べ物にもならない。
天と地の差とはまさにこのこと。
「…どうしよう、かな」
どうしようもないってわかっているのに、焦燥感が私を取り巻く。
でも…だからといって弱気になっちゃダメだと思った。
傷つく覚悟が無いなんて言ったら嘘になる。
だけど、それ以上に後悔したくないって気持ちの方が断絶強いんだ。