あんたなんかもう好きじゃない
DAY6
「ねえねえ楓、ちょっと聞きたいんだけどさ」
「ん?」
「なんで真尋先輩と付き合わなかったの?別れた後に告白されたんでしょ?」
お互いに隠すつもりがなかったからか、私と雅也が夏休み中に別れたことはあっという間に大学内で広まった。
雅也狙いの子はここぞとばかりにアプローチしているらしいが、今のところ全員撃沈しているらしい。
もうほとんど単位は取り終わっている私は、今期は週に1日しかキャンパスに来ない。
だから、雅也と会うこともほぼなかった。
沙也香の質問がきっかけで、なんとも言えない関係に落ち着いた真尋先輩を思い出す。
普段は何でも沙也香に相談、報告をするが、これまで恋愛に関しては肝心なことは一切喋ってこなかった。
つまるところ、私はけっこうな恋愛脳だったのだ。
雅也と別れたことも、真尋先輩に告白されたことも、すべて事後報告。
現在進行形の話しはまったくしない私に呆れつつも、沙也香は私が話すのを待ってくれていた。
季節が変わり、無事に就職先も決まって私が落ち着いたタイミングが来た今だからこそ聞いてきたのだろう。
そんな空気の読める親友には、ありのままを話したい。
「雅也と付き合っている段階で真尋先輩とヤッたの、言ったっけ?」
「聞いた」
「その時はすごくときめいたしドキドキして舞い上がったよ。ほぼ体験無いからわからないけど、めっちゃ気持ち良かったから真尋先輩は多分上手いほうだったんだと思う。でもさ、真尋先輩のことが好きかって考えたら、それとこれとは別じゃないかな、って」
「ドキドキして、エッチも気持ち良かったのに?」
「私が長い間雅也に好かれていないのに彼女の座にしがみつき続けたのも話したじゃん?雅也以外の男には興味なかったのと、そもそもモテないタイプだから男性と接点も特に無いし、男日照りが続いてたんだよ。端的に言っちゃえば、男にほぼ免疫無い状態だったから、私を女性扱いして、欲しがる真尋先輩にときめいただけなの」
「普通はそこから新たな恋が始まると思うんだけど」
「あれは恋じゃないよ。浮気心でしかなかった。そしてそれは真尋先輩もわかっていた。だからくっつかなかったの」