ねぇ、悪いことしよ?
「おお!それはいいな。しかも、ちゃんとやり遂げてくれそうだ」
「確かに」
「賛成ー!」

 私が混乱しているうちにも、生徒会役員の人たちは話を進めている。一体何が起きているのやら。困っているうちにも会話が進んでいくので、口をはさむ間もない。

「翼でかした!」
「そっすか?ありがとうございます」
「ところで翼、ちゃんとお願いはしているのかい?」
「はい!」

 目をキラキラさせて返事をする翼と呼ばれた人物は、同意を求めるように「ねっ!」とこちらを向いて言う。一体何の話なのやら。そろそろ聞いてみることにする。

「あの、何の話ですか、、?」

 シーン。

 本日2度目の、この擬態語がぴったりの時間。この時間が何ともソワソワして落ち着かない。

「つーばーさー?」
「ヒュッ」
(変な声。ちょっと面白い)
「かいちょ~、そんな時間なかったんですよぉ~。ちゃんと説明するんで許してください!おねがいします」

 そういって90度のお辞儀をする。なんか、すこし苛ついていたけど、これを見てたら根はいい子なんだって思える。ちょろいかもしれない。でも、それが私の彼へ対する印象だった。

「まあ、そこまで言うなら考えてやらんこともない」
「ほんとっすか⁈ありがとうございます」
「うむ。じゃあ、葛西さんに説明したまえ」
「はい!」

 そういって彼はこちらをくるっと向く。

「えっとですね、この学校は毎年、生徒会役員の人が、第一回の会議の様子を見て実行委員長を決めるんです。これと言って仕事はないですが、まとめ役を担っていただいたり、前で代表挨拶をしていただいたりしています。今までは、少しにぎやかな子たちを選んでいたのですが、ことごとく逃げ出されてしまって困っていたので、今年は今までにないタイプの人を選ぼうということになったんです。いきなりの話で申し訳ないですし、全然断っていただいていいので。ここまでで何か質問ありますか」

 一息ではないが、途中で口をはさめない圧を感じた。さっきまでの言動とは大違いだ。こう、人をまとめるのがうまそうな感じ。普段はなじみやすいのに、やることはちゃんとする、、、みたいな。
 そんな彼に言われて断ることができるだろうか、否、私にはできない。そもそも、何かを頼まれても私は断ることができない性質なのだ。知らないはずなのに、なぜか見透かされている気がする。
 任命されたからには全力を出すが、一つだけ、言っておかなければならないことがある。


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