ねぇ、悪いことしよ?
 無事、本屋についた。
 そして本屋につくなり、彼は私に

「羽奈先輩は少し待っててください」

 訳も分からないまま私は「わかった」という。だが、状況がよくわからない。後輩のわがままを聞いて来た本屋で放置される、、、そんなことある?まあ、あるから私が今経験しているわけだけど。
 しばらく待っていたら、翼がカゴを本でいっぱいにしてやってきた。そして、未購入本を見るためのスペースに移動する。
 ちなみに、このスペースがあるのはこの本屋だけで、買った後の公開を少しでも減らしてほしいとのこと。だが、ここで読んで買わないのは困るから、店員さんが一人いて、あまりに長いこと読んでレジに行かなかったら購入を促すため、本の魅力を力説している(これが長いらしく、途中で聞くのが付かれる人が多いらしく、途中で「だ―もうわかった、買うよ!」と言わせるらしい。店員さんおそるべし)。
 運よく座る場所を見つけた私たちは、テーブルにカゴを置いて腰掛ける。なぜかこの瞬間、妙にソワソワして落ち着かなかった。そして少しの沈黙の後、彼が話し始めた。

「羽奈先輩。先輩がでる種目って何ですか?」
「え?えっと確か、、、玉入れだったかな」

 私がそういうなり、彼は口の端をニヤッと持ち上げて不敵に笑った。

「知ってます。それ、コツ知らないと入れにくいじゃないですか。だから、勉強しましょう」
「、、、は?」

 そもそも私がこの種目を選んだのは、点呼がなくてサボるのに適しているから。だから選んだというのに、、、。

「昨日、俺この本屋に漫画の新刊会に来た時たまたま目に入ったんですよ。この『玉入れがうまくなるコツ』っていうのを。また珍しい競技だなって思ったんですけど、生徒会に送られてきた出場選手簿の中に先輩の名前が入ってたのを見たことを思い出したんです。そしたら、これでコツつかんだら先輩も体育祭楽しめると思ったので!」

 そういって無邪気に笑う彼は魅力的だった。だが、私はどうしても乗り気になれない。
 私は少し考える。だが、そのうちにもずっと翼は私に話しかけてくる。

「ほんとに最悪、、。体育祭なんてやりたくないのに」

 つい、言ってしまった。

(てん、てん、てん、まる)

 これが見事に当てはまる空間に、後輩の無遠慮な声がかかる。

「なんで?体育祭楽しいじゃん?」

 初めて敬語が取れた彼は、無邪気すぎて無性にイライラしてきた。イライラしたら私は余計なことまで口走ってしまうから、あまりイライラしないようにしてきた。でも、今はそれを忘れてしまった。
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