忘れものの日記
プロローグ
青暗い雨の降る朝の教室に、ぽつんとお前はいた。
数多と降る水の雫を数えるように、ぼうっと頬を付きながら眺めながら。
扉付近でそいつの萎れた背中を見る。
こいつがもし、背中に翼を生やしているのなら、今この瞬間のお前は大きな翼を閉じて悲しみを表現しながら翼をしまっているだろう。
いくら見てもこいつに翼も生えていないし、白い羽根も落ちていない。
あるはずのない話だ。
重くもあり軽くもある身体を動かして、彼女の目の前に現れる。
お前は一つも視線をよこさずに、窓枠の向こうの木々の葉を眺めるのみ。
雨粒があたり、起き上がり、また当たって、またまた、起き上がった葉を、目を潤ませて唇を食いしばりながら視界に映していた。
雨脚がさらに強くなる、強くなるたびに、教室は静まり返る。
教室の外は土砂降りだが、遠くの空は青い空が見えた。
もうすぐここにも晴れがくる。
「知誉」
そいつが座る隣の席を見ながら、喉から嗚咽が出るような声で名前を呼ぶ。
名前を呼ぶなら、目の前を見て言えばいいのに、お前はその席から目を離さない。
「こんなに早く学校に来ちゃったけどさ、学校サボろうよ。因みに、知誉の選択権は無いからね」
なにそれ、強制なんだ。
まあ全然いいし、何なら喜んで学校をサボるけどね。
杏は立ち上がると、恐らくほぼなにも入ってない鞄を肩にかけ教室を意気揚々と出ていく。
元気そうに見えるその足取りと、鞄を持った右手を見ると、無性に哀しくなってしまった。
重くも聞こえる雨音を背後に感じる。
「歩くならもう少し遅くしてよ。歩くの遅いの知ってるでしょ」
後ろから声を掛けたら、歩くのをゆっくりにしてくれて、彼女の気遣いに涙が一つポツリと落ちる。
数多と降る水の雫を数えるように、ぼうっと頬を付きながら眺めながら。
扉付近でそいつの萎れた背中を見る。
こいつがもし、背中に翼を生やしているのなら、今この瞬間のお前は大きな翼を閉じて悲しみを表現しながら翼をしまっているだろう。
いくら見てもこいつに翼も生えていないし、白い羽根も落ちていない。
あるはずのない話だ。
重くもあり軽くもある身体を動かして、彼女の目の前に現れる。
お前は一つも視線をよこさずに、窓枠の向こうの木々の葉を眺めるのみ。
雨粒があたり、起き上がり、また当たって、またまた、起き上がった葉を、目を潤ませて唇を食いしばりながら視界に映していた。
雨脚がさらに強くなる、強くなるたびに、教室は静まり返る。
教室の外は土砂降りだが、遠くの空は青い空が見えた。
もうすぐここにも晴れがくる。
「知誉」
そいつが座る隣の席を見ながら、喉から嗚咽が出るような声で名前を呼ぶ。
名前を呼ぶなら、目の前を見て言えばいいのに、お前はその席から目を離さない。
「こんなに早く学校に来ちゃったけどさ、学校サボろうよ。因みに、知誉の選択権は無いからね」
なにそれ、強制なんだ。
まあ全然いいし、何なら喜んで学校をサボるけどね。
杏は立ち上がると、恐らくほぼなにも入ってない鞄を肩にかけ教室を意気揚々と出ていく。
元気そうに見えるその足取りと、鞄を持った右手を見ると、無性に哀しくなってしまった。
重くも聞こえる雨音を背後に感じる。
「歩くならもう少し遅くしてよ。歩くの遅いの知ってるでしょ」
後ろから声を掛けたら、歩くのをゆっくりにしてくれて、彼女の気遣いに涙が一つポツリと落ちる。