苦くて甘い恋の花言葉
文化祭本番
あの日からはるくんとは話せていない。

いつも朝ははるくんがおこしにきてくれたがあれから一度も家には来なかった。

だけど、学校に向かうときや、家に帰る時には何も言わず二人で帰る…それが前ならば凄く嬉しかった。

だけど今は嬉しいよりも早くこの空気から抜け出したいだった。

私とは話してくれないのに他の人には普通に話しているはるくんを見るとその人に嫉妬してしまう。

その気持ちはすぐに胸にしまう。

そんな日が続いて気づけばもう、文化祭本番の日。

みんなで頑張ってきたので私も一緒に頑張れたらいいな。

それにはるくんとも仲良くなって、ブーケ受け取ってもらえるようにしないと!

もう無理かもしれないけどせめて最後くらい頑張りたい。

それに、美優さんと一緒に約束したから。

「よし!今日は頑張るぞ〜!」

「ふゆりさん…」

誰もいない部屋で私は声を出したつもりだったがちょうど同じクラスの子が衣装チェックに来てそのところを見られてしまった。

「今のは見てないことにしてね?何もなかったの」

無理やり何もなかったことにしようとたくさん話す。

「…はい。何も見てません」

「うんそうだよね!そういえば衣装のチェックしにきたんだよね?多分綺麗に着れていると思うけど…どうかな?」

「見た限り大丈夫そうです。今日はよろしくお願いします」

「うん!役に立つかわからないけど頑張るね」

「がんばってください」

そうして私の持ち場に移動した。

しばらくすると放送がなった。

『これより第51回文化祭を始める』

その放送を共にお客さん達が入ってくる。

みんなすぐに席に案内してメニュー表を見せている。

よし!私も接客しなきゃ!

「すみません!」

「はい!ご注文はお決まりですか?」

「はい。この紅茶とパンケーキを二つください」

「かしこまりました。少々お持ちください」

「五番テーブル、紅茶とパンケーキ二つお願いします」

「は〜い」

注文を受けて料理班の人たちに伝える。

「ふゆりさん!3番テーブルできたからお願い!」

「分かりました!」

三番と書いてあるところに置いてある食べ物をお盆に乗せて運ぶ。

「お待たせしました。パフェとコーヒーになります。どうぞごゆっくりお楽しみください」

「ありがとう。それにしてもすごいわね…うん。美味しいわ」

「ありがとうございます!」

お客さんに喜んでもらえて良かった。

「…お客様困ります!」

何かあったのかな?

「いいじゃねーか。どうせ暇だろ?」

「暇じゃありません!キャ!やめてください!」

客の男性が女の子の腕を引っ張った。

「お客様にそんなこと言っていいのか?」

あ、やばいこうゆうタイプ一番嫌いだ。

「…お客様大変申し訳ございません。今から言うことを許してもらってもいいでしょうか?」

つい我慢できずに話しかけてしまった。

「あぁ?はやく言えや!」

「許可は取りましたからね?後から何をいわれても私達は責任を取りません。では言わせていただきます」

私は今思っていることを迷惑客に言う。

「…お客様は神様とか言う考え持ってるのかもしれないけどここ飲食店じゃないんですよ〜。文化祭の出し物ってこと理解していないのかな?だから、お前がいなくてもこっちはやっていけるわ!てっかお前みたいなブスが私のクラスメートに話しかけてるんじゃねぇよ!わかったら早く出ていけ!…以上でございます」

「お前ふざけてんのか!」

「ふふ、ふざけてるのはどちらでしょうかね?」

「お、お前!」

客は私を殴ろうとしてきた。

やばい。ちょっとやりすぎてしまった。

私は、痛みを我慢しようとした。が、痛みは一向にこなく不思議に思っていると客の拳をはるくんが受け止めていた。

「な、なんだよ!」

「なんだよはこちらの方です。あなたのせいで他の客が楽しむことができなくて迷惑です」

「うるせーな!他の客がどうとか関係ないだろ!」

あいつ!やばい、またキレそう…。

「…………」

はるくんが客の耳元で何かを言った。

すると今さっきまでの態度はなんだったのかと言うほどにお怯えている客の姿があった。

「今いるお客様。ご迷惑をおかけして申し訳ございません。先生に言ってきたのでもう安心してください」

はるくんは今いる他のお客さんに謝罪をした。

「桜宮くん大丈夫だよ!」

「謝るのは春希くんじゃないからねぇ」

「ふゆりちゃんのあのキレもよかったよ」

「そうそう。本当あれは爽快だった!」

話が少し脱走している気がするけどみんな気にしていないって言ってくれてよかった。

それにはるくんにあの時助けてもらったことのお礼言わなきゃ!

「はるくん!」

「…」

何も言わずに放り向いた。

「あのね。今さっきは助けてくれてありがとう!」

「別に…「じゃぁ!私手伝うから!」」

何言われるか怖くてはるくんの話を遮ってしまったけど少しでもはるくんと話せてよかった。

そして色々騒ぎはあったけれど、気を取り戻してみんなで頑張った。

そのおかげかたくさんの人が来てくれた。

そしてついにミスコンの時間が迫ってきている。

「うぅ…緊張する」

「ふゆりなら大丈夫だ!」

「うんうん。その天使の衣装もとっても素敵。自信持って」

そう私は紗奈さんの助言で本番は天使の衣装を着ることになった。

それでなんで天使の衣装になったのかわわからないけど。

「じゃあちょっと気が楽になるようにお話ししようか」

「そうですね」

「…ふゆり今日来た客にキレたんだって聞いたぞ」

「えぇー!ふゆりちゃんキレたの?その人大丈夫?」

私の心配より客の心配をするところ本当に私のことわかっているなって思う。

「大丈夫ですよ。それにかなり抑えたんですよ」

「ふゆりがキレると抑えていても怖すぎて倒れる人が続出したからあんまりキレないようにとは言ったものだがあんまり意味なかったか」

「そうよね。ふゆりちゃんナンパしてくる人がしつこいからって言う理由でキレて周りにいた人大体気絶してたよね」

「あぁ。ふゆりを敵に回したらダメということをあの日感じた」

「なんか美優さんも紗奈さんも大袈裟に言い過ぎですって!」

私たちは顔を見合わせて笑った。

「やっぱりふゆりはその笑顔が一番似合う」

「うん。だからその笑顔を忘れないでね」

「うん!二人ともありがとう!」

「お礼は優勝してふゆりがはるくんと付き合ってからにしてくれ」

「…美優さん!からかってる!でも、ありがとう。美優さんも好きな人に告白頑張ってね」

「そうだな。頑張る…」

「絶対ないけど振られたら私のところに来ていいからね?二人とも慰めてあげるよ」

「ふふっありがとうございます」

美優さんと紗奈さんと話していると気が楽になった。

あんなに緊張してたのが嘘みたい。

「よしふゆりミスコン会場まで行ってこい」

「行ってきます!」

私はそう言って二人と別れてミスコン会場へと向かった。

❅•❅•❅

今はミスコンのアピールタイム。

思ったよりも人が来ていてびっくりした。

だけど美優さんや紗奈さんと話したおかげなのかあまり緊張はしていない。

「ラストとなります。いまやこの辺では知らないものはいない学園の花…氷上ふゆりさんです」

学園の花?私そう呼ばれているの?

人違いとかじゃないよね?氷上ふゆりは私しかいないし。

うん。考えるのをやめて今はこっちに集中しよう!

「えーっと、こんにちは」

挨拶をして微笑む。

「氷上さんの衣装は天使だー!微笑んでいるところがまさしく地上に舞い降りた天使‼︎」

「ふぇ?そ、そう言ってもらって嬉しいです…この衣装は大好きな先輩達が選んでくれたものだから」

「……はぁっ!すみません見惚れていました。大好きな先輩というと?」

「美優さんと紗奈さんです」

「プリンスと妖精と仲がよろしいんですね」

プリンスと妖精?

言われてみたら確かに容姿とか性格とかがそうかも?

「…そうですね!仲良いです!」

「そうですか!では本題に戻ってふゆりさんは今日歌を歌われるだとか」

「そうですね」

「何を歌うんですか?」

「恋の花言葉っていう曲です」

「恋の花言葉ですか!もしかすると好きな人がいたり?」

「ふぇ⁈なんでそれを!」

「恋の花言葉はラブソングですからね。では今回は好きな人に向けて?」

「まぁそれもあるんですけど…こうやって応援してくれたり私のことを助けてくれる人も私は好きだから。私はその気持ちを歌にできたらいいなと思ってこの曲を選んだんです」

「それはみなさん嬉しいと思いますよ」

「そうですかね?」

「はいそうですよ。ではお話もここまでとしてお歌をお願いします」

「はい!」

ふぅ〜。大丈夫緊張なんかしていない…今はただ楽しいと言う気持ちを歌に込めるだけ…。

よし!

「歌います。恋の花言葉」

♪〜

「綺麗な歌声をありがとうございました!」

「こちらこそありがとうございました」

「では!各自のアピールタイムも終わったと言うことで投票に移りたいと思います!投票には自分がよかった!応援したい!と言う方に投票してください!では一旦休憩に入りましょう」

そうして一旦休憩が入った。

「ふゆり!一旦お疲れ様」

「美優さん、紗奈さん!」

「ふゆりちゃんの歌声良かったよ!みんな天使の歌声って絶賛していたよ」

「喜んでもらえているようで良かった…」

「私はふゆりに票を入れたからな!」

「私もだよ」

「ありがとうございます!」

やっぱりこうやって応援してくれると嬉しいな。

「でも二票だけじゃ優勝は無理かな」

「何を言ってるんだ!二票どころかその数百倍入るぞ」

「そんな漫画みたいなこと起きませんよ」

「たぶん起きるよ」

「紗奈さんまで〜」

その時まで私はからかってるんだろうなって思ってた。

そう"この時"までは…。

「それでは投票結果に移りたいと思います」

ついにきた…。

私に入れてくれた人は少しでもいるのだろうか。

「優勝者は!!」

お願い…!

「学園の花…氷上ふゆりさんだー!!」

えっ!嘘、私?

「ふゆりさんは圧倒的に投票数が多かったですね。それではふゆりさん何かお願いします」

「はい」

そうして私はマイクの前まで歩く。

こうして見てみるとやっぱり人の数が多いな…。

「まず初めに私に投票してくれた人ありがとうございます!おかげで優勝することができました!初めはスイーツ食べ放題券が欲しくてめざしたんですけど……」

少し笑いが起きる。

最初は、はるくんにスイーツ無料券がもらえると言われてやりたいと思った。でもでも…!

「だけど、先輩が手伝ってくれたりクラスメートが『頑張れ〜応援してるよ!』って言ってくれるのがとても嬉しくて…初めは小さな理由で始めたけどだんだん応援してくれる人のきたいに応えられるように頑張りたいそう思えるようになりました」

だから…はるくん…。

「本当にありがとう!」

お辞儀をするとともに拍手がおきる。

「氷上ふゆりさんありがとうございました!では早速、優勝者に送るティアラとブーケ、そしてふゆさんが欲しがっていたスイーツ一年間食べ放題券をさあげます!」

そうして私は受け取る。

「ティアラは記念に…そしてブーケは…好きな人がいるなら投げずそのまま渡しといた方がいいですね」

「まぁ…そうですね」

恥ずかしい…!

「ではこれてでミスコンは終わります!ふゆりさん頑張ってくださいね!」

「はい!」

よし!このブーケをはるくんに渡そう!

そして振られよう!

うん!覚悟はできた。

「はるくん!」

「ふゆり…伝説聞いいたよ。ブーケを渡せばいいんだっけ?早く行かなくていいの?その好きな相手に渡せなくなるんじゃない」

やっぱりふゆって呼んでくれないんだ…。

そうじゃなくて…!

「私は…!」

「言わないでふゆりの口からなんて聞きたくない!」

「えっ?待ってはるくん!またおいてかないで!」

どうしようやっぱりダメなのかな?

もう諦め「ふゆり!約束と違うぞ!」

この声は…。

「美優さん…でも…」

それに隣にいるのは朔夜さんだ。

美優さんは告白に成功したんだな…。

二人はいつもと違う雰囲気を纏ってる。

「ふゆり!約束したじゃないか初めから諦めないと!」

初めから諦めない…。

これは美優さんとの約束の言葉。

『ふゆり…ふゆりはな諦め癖があるだけどな初めから何にも諦めなくていいんだぞ』

『でも…諦めなきゃ辛い思いをするよ?』

『でもな何もやらないで辛い思いをするより何かやって辛い思いをする方がましだぞ。だからな…私との約束だ』

「『初めから諦めない!』」

そうだ!私は美優さんと約束した!

だけど…。

「ふゆり!走れ!」

「!!うん!私頑張る!」

私はブーケを握りしめて走った。

はるくんは多分空き部屋にいるはず。

「はるくんいる?」

「ふゆり好きな人に渡せた?あれまだブーケを持ってるの…早く行った方がいいんじゃない?」

やっぱり勘違いしている?

「だからね、私が好きな人はね「だからふゆりの口から聞きたくない!」え?」

涙がまたでてくる。

「やっぱり話も聞いてくれないの?私はるくんのことがずっと好きだったのに…今日振られてもいいから頑張ろうって決めたのに…」

口から止まらず言葉がスラスラと出てくる。

もうこの際全部言ってしまおう…。

「私いつのまにかはるくんのこと好きになったのに…はるくん私以外の人にも優しく接してたから、いっつもその人達に嫉妬して諦めようって思ってたのに、はるくんが思わせぶりなことしてくるからあきらめることもできなかったの…振られてもいいって言ったけど、少しでもはるくんと話せないと私無理なの。それくらいはるくんのことが大好きでたまらないの…それくらい好きなのにやっぱりダメ?はるくんは私のこと嫌いになっちゃった?それとも元から嫌いだった?」

あぁ…こんな重いこと言っても余計嫌われるだけだろうな…。

はるくん黙ったまんま…やっぱり迷惑だったよね。

「ごめん今言ったことは忘れてね?」

「それはできそうにないや」

「なんで?なんではるくんは思わせぶりなことをしてくるの?今だってそう!私のこと…きらいなのに…いっつもそうやって期待させることをしてくる」

「はぁーほんとふゆりは可愛いね」

「からかわないで!お世辞言っていること分かってるもん…そのくらい分かるもん」

分かっているけど可愛いってはるくんに言ってもらえると嬉しい。

「それが可愛いんだよ。ふゆりの好きな相手がいるって聞いてイラついたけど俺だなんて…それに嫉妬だなんて可愛いね」

さっきから可愛い可愛いって言われて恥ずかしい…!

「でもそっか今までのアピール無駄じゃなかったんだ…」

「アピール?」

「期待させてるって言ってるけどだって期待させるよう(・・)にしてたからね」

「え?」

何かわからないことを言っている。

「俺もふゆりが好きだよ」

「嘘!だってはるくんクラスメイトが好きって言ってたし。女子たちが、はるくんはお姫様のような人が好きだって」

「ふゆりもクラスメイトでしょ?それに俺にとってふゆりはたった一人しかいないお姫様だよ」

「それは…でもはるくんの好きな人は本当に私?」

「そうだよ。本当はもう少し後に言うはずだったけどふゆりにここまで頑張ってもらったのに俺だけ気持ちを言わないだなんてことはしないからね」

嘘みたい…。

「もう一回告白していい?」

「え?なんで?」

「男はカッコつけたいの」

「分かった。いいよ」

「…俺はずっとふゆりが好きだ。付き合ってほしい」

「はい!ぜひよろしくお願いします!」

よかった。はるくんと付き合えて嫌われちゃったと思ってから…。

「あっ!そうだ!はるくん」
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