(仮)花嫁契約 ~ドS御曹司の愛され花嫁になるまでがお仕事です~
『アンタにもう一つくらい借りを増やしておいた方が、俺もこの先やりやすいかもしれないな。いいだろう、あの男の連絡先を調べて送ってやる』
「……え? 良いんですか」
逆にあっさりと引き受けてくれて拍子抜けしてしまう、もしかすると明日は槍が降るのかもしれない。案外神楽 朝陽は情に訴えればチョロいのかも何て狡い考えはすぐに見破られたようで。
『鈴凪の借りが増えるだけのことだ、その分以上にアンタには働いてもらう予定だし問題ないだろ』
「ああ、そういう意味なんですね」
今回の「お願い」もちゃんと借金として増やされていて、未来の私がしっかりと利子をつけて返す羽目になるらしい。お坊ちゃんの癖に、神楽 朝陽はケチな性格してると文句を言いたくなりそうだけどグッと我慢しておく。
神楽グループの御曹司ともなれば、いい加減な貸し借りをやっていたらきっと都合良く利用されるだけの立場になるだろう。彼の考え方は企業の上に立つ人間としては間違っていないのかもしれない。
……それが私にとっては、都合の悪い事ばかりなのではあるけれど。
「それで、私がすることは決まったんですか? 今度連絡するって言ってから音沙汰無しでしたけど?」
『大体は、な。まあ、それはもう少し待ってろ、先に守里 流の連絡先について調べてやるから』
「ありがとうございます」
お礼の言葉を聞いているか分からないくらい、あっさりと電話は切られてしまった。それでも神楽 朝陽は絶対に私とした約束は守ってくれる気がして、とりあえずホッと胸を撫で下ろした。