(仮)花嫁契約 ~ドS御曹司の愛され花嫁になるまでがお仕事です~
『ありがとうね、おかげで守里さんからきちんと支払いして頂けたわ。貴女のおかげよ、雨宮さん』
「……あ、いえ。それは良かったです、それではもう私に請求が来るような事はないと思ってていいですか?」
流の住んでいたアパートの大家さんから感謝の電話をもらって、私も心配事が一つなくなったことにホッとしていた。元カレの連絡先について調べると言ってくれた神楽 朝陽だったが、彼はその理由を知るとわざわざ流に「別れた相手に迷惑をかけるな」と釘を刺してくれたらしくて……
神楽 朝陽はこれも「貸しのうちだ」と言ってくれたけれど、本当にそれを信じてもいいのだろうか?
『ええ、雨宮さんに守里さんの事で連絡することは今後はないと思う。本当に助かったわ、ありがとう』
「いえ、それなら良かったです」
通話が終わった後も、まだ信じられない気持ちだった。私にあんな態度を取った流がすんなり支払いをするとは思ってなかったのに、たった数日でこんな事になるなんて。
神楽グループの御曹司に睨まれるのは流石に困るという事なんでしょうけれど、自分がどれだけ元カレに馬鹿にされていたのかが分かって少し悔しくもあった。
『結婚の為に貯めていた貯金とやらはもう少し待ってろ、せっかくだからもう少し面白くして返してやる』
神楽 朝陽がついでのように私に言った面白くという単語が気にはなるけれど、今は深く考えるのは止めておくことにする。
それよりも彼が契約についての話をする日がいつなのか、その事の方が今はずっと気になっていた。