(仮)花嫁契約 ~ドS御曹司の愛され花嫁になるまでがお仕事です~
お互いに笑顔で見つめ合っていても、決してその心が通じ合ってるわけじゃない。私たちを繋げるものは愛情などではなく契約となるはずだから。
それでもやると決めたからには、きちんと神楽 朝陽の恋人役を演じるしかない。
「今はそう言うことが出来ても、そのお嬢さんもすぐにお前から離れていくだろう。まあ、それまでは二人の好きにすると良い」
「……その言い方、やはり彼女の時も貴方が?」
何かを言いかけて、私に視線を移して神楽 朝陽はその言葉の続きを飲み込んだようだった。彼女、というのは以前紹介した女性という事だろうか?
彼の父親は私がその人と同じように、神楽 朝陽から距離を取るみたいに話しているけれどどういう事だろう?
「あの女性には所詮その程度の覚悟しかなかったという事だ、そのお嬢さんはどうだろうな? さあ、もう部屋から出ていきなさい。私は次の予定が入っている」
「……もう行くぞ、鈴凪」
悔しさを滲ませるような表情、そして言葉遣いもいつも通りに戻っている。そんな神楽 朝陽に手を掴まれて、そのまま私は社長室を後にした。
そのままこの前連れて来られた隣の部屋に入るのかと思えば、彼はドアを開け中にいる誰かに話しかけている。すると中の人物からカードキーのようなものを手渡され、今度は私を連れたまま奥のエレベーターへと移動しそのまま乱暴に乗り込んだのだった。