(仮)花嫁契約 ~ドS御曹司の愛され花嫁になるまでがお仕事です~
そんな大事な事は最初に言っておいて欲しい、これじゃあ後出しじゃんけんみたいで狡いような気がする。今になって言い出す所がドSな神楽 朝陽らしいとは思うけれど、さすがに私だって不満を感じて。
納得いかないといういう顔で彼を睨めば、相手を喜ばせるだけで。どう考えても神楽 朝陽は自分の発言で、私が焦ったり戸惑ったり怒っていたりするの見てを楽しんでいるように思える。
ドSなうえに相当な性悪なのではないだろうか? こんな人に借りを作ってしまったことを今更後悔してもどうにもならないのだけど。
「不満か? 心配しなくてもいい、鈴凪が完璧な婚約者と花嫁を演じればなんの問題ないんだから」
「婚約者、は分かりますが花嫁って? 私の役目は神楽さんの恋人のフリをするだけじゃないんですか?」
確かにさっきの神楽社長との話では婚約するつもりだという話だった気もするが、それにしても花嫁とはいったい?
婚約者なら契約が終わった後すぐに有耶無耶にするのも難しくないだろうが、結婚式をするとなれば話は全く変わってくる。それも神楽グループの御曹司ともなれば規模も普通とはけた違いな可能性があるのに。
「……まさか私と貴方で結婚式を挙げる、なんて言いだしませんよね?」
「もちろんそこまでを契約内容に入れているが、それに何か問題でもあるのか?」
ええと、問題しかないと思いますが? 主に私にとっては、なのかもしれないですけれど。そう言ってしまいたいのに言えなくて、がっくりと肩を落としてしまう。