(仮)花嫁契約 ~ドS御曹司の愛され花嫁になるまでがお仕事です~


「相手を好きだから触れたいって、朝陽(あさひ)さんはさっき言いましたよね? それなら……好きなのに触れ合うことを喜べない私に、何かしらの問題があったのかなって」
「は? そうとは限らないだろ、守里(元カレ)以外の男でも同じだったのか?」

 何でこんな事まで朝陽さんに話してしまってるんだろうとは思ったが、変に隠す方が後々面倒なことになりそうなのでこれで良かったかもしれない。
 意外にも彼は、私を揶揄うでもなく真面目に話を聞いてくれているようで。

(ながれ)が初めての彼氏だったので、それはちょっと分からないですね」
「……そうか。それは、何と言うか」

 流と出会って、彼しか見えてなかった。他の男性に目を向けれるような器用さもなかったし。そんな私に朝陽さんは何と声を書ければいいのか迷っているようだったから……

「いいんですよ、気を使わなくても。だけどまあ、そういう事なんで『婚約者として触れ合う』ってのはちょっと難しいかもしれないですけど」
「……分かった。演技に必要な時以外、鈴凪(すずな)が良いと言わなければ俺からは触れない」

 まさかそんな事を朝陽さんが言い出すとは思わなくて、一瞬口をポカンと開けてしまった。ドSの彼なら、それも契約だから克服しろとか言い出すかと思ったのに。

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