海のように輝く君色を、もっと知りたい。〈ボーイズライフ〉
 十九時頃に家へ帰ると、両親が揃ってリビングにいた。ふたりは動画配信見放題の洋画の世界に入りこんでいた。ふたりともこっちの存在には気がついていない。めんどうなことは早く済ませてしまおうと思い、すぐに声をかける。

「ちょっと、話があるんだけど……」

 ふたり一斉にこっちを見た。
 なんとなくの威圧感で後ずさりしたくなる。

「これ、書いてほしいんだけど……」

 何も説明しないですぐに保護者同意書を見せた。

「おかえり。っていうか、何これ」

 母さんが受け取り、目を細めながら同意書を見つめた。

「あの、エキストラやってみたくて」
「エキストラって、映画の通行人とかのやつか? あ、この人か?」

 ちょうどテレビ画面に映っていた通行人役の人を指さしながら父さんが訊いてきた。
「うん」

 俺は「うん」としか言っていないけど、父さんと会話したのはかなり久しぶりだ。

「どれ、俺が同意書書くわ。いや待って? どんな映画なんだ?」

 父さんが座っていたソファーの前にあるローテーブルに同意書を置き、書き始めたところで手を止めて質問してきた。

 多分、俺がこういう発言をするのがめずらしいからか、父さんが少し動揺しているように見えた。

「これなんだけど」

 さっき野田から教えてもらったサイトをふたりに見せた。

「楽しそうだな」
「なんか役いっぱいあるけど、何やるの?」
「そこまではまだ決まってない……」

 なんとなくダメとか言われそうな予感だったけど。予想外にあっさりと許可をもらい、興味まで持ってくれた。心が少し弾んだ。書いてもらうとお礼を言ってから部屋に行き、すぐに親の許可を貰えたことを野田に知らせた。

『同じ日に行きたいですね。どの役に応募するか早速決めましょう』

 まるでスマホの前で待っていたかのような早さで野田からの返事が来た。

 スマホでサイトを開き、スマホで撮った自分の顔、そして住所や名前、年齢などのプロフィールを記入する。あとは、自己PR。ここだけ迷った。とりあえず『6年間やっていたバスケが得意です』と書いといた。

 久しぶりに胸が踊る感覚だ。


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