海のように輝く君色を、もっと知りたい。〈ボーイズライフ〉
 家に近い組は出番のない日は撮影場所に来ないけど、俺らは毎日泊まっているから暇な日もあった。

 最終日に近づいてきた日、出番がなくて暇だったから、野田と海辺を散歩した。昼から暑くなる予報だったから朝からさまようことにした。

 太陽は出ているけれどまだ涼しい。朝の海を眺めながらの散歩は心地よい風も流れてきて気持ちがよかった。

「初めて映画撮影に参加したけど、なんか色々凄いな」
「ですよね! 沢山の人たちが関わってひとつの映画が完成されていって。映画ってこんな感じで作られているなんて、ただ映画を観ているだけじゃ分からないですよね」

 ふたりで砂浜の上に座った。

「平井くん、今回沢山映りそうですね」
「何? 映らないとかあるの?」
「ありますよ。たまに頑張ったのにまるごとカットされる時もありますからね。今回はエンドロールにも僕たちの名前が載るみたいですし、平井くんの名前と僕の名前が一緒に載るのがなんか不思議です」

 俺も野田と名前が載るの不思議だ。
 そもそもこうやって今一緒にいるのが不思議だ。

 まだ撮影は終わってないけど、エンドロールの俺と野田の名前を確認したい。早く完成した映画を観たい。俺のシーンもだけど、野田がどのシーンに映っていて、どんな演技をしていたのかひとつひとつ確認したい。

「名前って、俺ら並んで載るのかな?」
「かもしれないですね」
「クラスのやつら、それ見て驚きそうだな」
「クラスの人に……言うんですか?」
「そっか、野田は秘密にしてたいんだっけ? 別に隠す必要ないと思うけどな。撮影中の野田、イキイキしててよかったぞ」

 野田はちょっと照れている様子だった。

「隠す必要ない……そうですよね」
「とりあえずは言わないでおくけど、もしバレて何か嫌なこと言われたら教えて? 俺が言い返してやる!」

 きっとすごくいい映画が出来そうで、完成したらひとりでも多くの人に観てもらいたいけど、とりあえずクラスのやつらには秘密。野田と俺だけの秘密。

「なぁ、野田って自分でやりたいなって思ってエキストラ始めたの?」

 気になっていた質問をしてみた。

「いや、父から誘われたからですね。それからハマってしまいまして。やっぱりひとつの映画を作るこの団結力が……」
「そうなんだ。これからも続けるの?」
「卒業したらどうなるか分かりませんが、続けられる環境ならずっと続けたいですね」

 今回俺は初めて参加したけれど、俺も――。

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