この恋の化学反応式
「違う、ここも違う、、、」

試験後すぐに配られた解答用紙のコピーと模範解答を見比べて、誰よりも速く自己採点を始めた。

赤いペンを持つ手はかすかに震えている。

周りの人が丸をつける音。
気にするなと何度自分に言い聞かせても、耳に入ってきてしまう。

(嘘、、)

化学の点数は、今までで1番低かった。
いや、化学の点数だけでなくほかの教科もだ。
私はその点数から思わず目を背けたくなった。

俯いて解答用紙を裏返そうとしたその時、

「合計点数は出たかな?」

そう塾長が声を掛けてきた。

「はい、一応、、、」

見せたくなかったけど、成績が伸び悩む私のことを塾長が気にしてくれているのは知っている。
何かアドバイスをくれるかもしれないと思い、バツだらけの解答用紙を塾長に見せた。

「、、なるほど」

塾長の表情から、これから言われるであろうことをあらかた察することができた。

「有川さん、厳しいことを言うけど今のこの点数じゃ志望校の合格は難しいかもしれない」

「、、、わかってます」

塾長は優しさで言ってくれたのだと分かっているのに、そんな言葉しか返せない自分が情けなくなった。
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