Immoral
食事が済むと少しドライブした。少し大きな公園のそばまで来て早川さんは車をとめた。
「散歩しようか。」
「うん。」
車を降りて人の少ない午後の公園を並んで歩いた。早川さんは私の手を取ってくれる訳ではない。私も自分から手を繋いだりできない。
まだ快い緊張感があった。早川さんが手を取ってくれればいいのにと心の中で願っていた。ベンチの前まで来ると早川さんが
「座ろうか?」
と言った。並んで腰かけた。暖かい午後だった。
「卒業式はいつ?」
早川さんが聞いた。
「3月12日。忙しいの。前の晩から。」
と私は言った。
「どうして?」
「前の晩から友達のとこに泊まって朝早く美容室に行かなきゃいけなくて。袴を着て髪を結ってもらわなきゃ。」
「そうか。」
と早川さんは微笑んだ。
私は続けた。
「で、そのまま学校へ行って卒業式が終わったらまた美容室に急いで戻るの。」
「あれ?学校遠いんだったよね?」
早川さんが聞いた。
「うん。西荻。美容室は吉祥寺。」
私は答えた。
「遠いね。じゃあやっぱり泊まらないと大変だね。」
「そう。朝早く行かなきゃいけないから。」
私は続けた。
「謝恩会も同じ日だから、卒業式が終わったら美容室に戻ってドレスに着替えて髪型も変えてもらうの。」
「忙しいね。」
「うん。感慨に浸ってる暇ないと思う。」
「そうか。」
「写真取ったら見せるね。謝恩会の髪型がすごいの。この前美容師さんに予行でちょっとやってもらったんだけど壊すのもったいなかった。」
「じゃあ晴れ姿の写真を見せてもらうよ。」
「うん。絶対見てね。」
私たちは学校の話、早川さんの学生時代の話、改築した家の事、就職活動の話、早川さんの仕事の話なんかをした。
「俺がつかまらないってご両親が怒ってたでしょ?」
私の両親の事なので苦笑いしながら早川さんが言った。
「そんなことはないですよ。忙しそうねって言ってたけど。」
「ご両親は今日俺と会ってるって知ってるの?」
「母親には私、話しちゃった。ごめんなさい。」
「ああ、いいの、いいの。それならちゃんとご挨拶しとかないといけないから。」
私はちょっと軽率だったかなと反省した。あまりにうれしくてつい母親に話してしまったのだ。
母親にしては珍しく大騒ぎして邪魔だてするような事はなかった。早川さんがいつもつかまらないので改築中はあまり快く思っていなかったのに。
考えてみれば不思議な事だ。彼の卒業大学が気に入っていたのかもしれない。
「来週の週末はちょっと会えないかもしれないよ。アポが詰まってて。」
「うん。」
私は頷いた。次のデートの話題に触れてもらえただけでも感激した。
「そのかわり、もし時間とれたら火曜か水曜の夜にでも会おう。」
自分でも顔がぱーっと輝いていくのがわかった。嬉しくてたまらなかった。
「散歩しようか。」
「うん。」
車を降りて人の少ない午後の公園を並んで歩いた。早川さんは私の手を取ってくれる訳ではない。私も自分から手を繋いだりできない。
まだ快い緊張感があった。早川さんが手を取ってくれればいいのにと心の中で願っていた。ベンチの前まで来ると早川さんが
「座ろうか?」
と言った。並んで腰かけた。暖かい午後だった。
「卒業式はいつ?」
早川さんが聞いた。
「3月12日。忙しいの。前の晩から。」
と私は言った。
「どうして?」
「前の晩から友達のとこに泊まって朝早く美容室に行かなきゃいけなくて。袴を着て髪を結ってもらわなきゃ。」
「そうか。」
と早川さんは微笑んだ。
私は続けた。
「で、そのまま学校へ行って卒業式が終わったらまた美容室に急いで戻るの。」
「あれ?学校遠いんだったよね?」
早川さんが聞いた。
「うん。西荻。美容室は吉祥寺。」
私は答えた。
「遠いね。じゃあやっぱり泊まらないと大変だね。」
「そう。朝早く行かなきゃいけないから。」
私は続けた。
「謝恩会も同じ日だから、卒業式が終わったら美容室に戻ってドレスに着替えて髪型も変えてもらうの。」
「忙しいね。」
「うん。感慨に浸ってる暇ないと思う。」
「そうか。」
「写真取ったら見せるね。謝恩会の髪型がすごいの。この前美容師さんに予行でちょっとやってもらったんだけど壊すのもったいなかった。」
「じゃあ晴れ姿の写真を見せてもらうよ。」
「うん。絶対見てね。」
私たちは学校の話、早川さんの学生時代の話、改築した家の事、就職活動の話、早川さんの仕事の話なんかをした。
「俺がつかまらないってご両親が怒ってたでしょ?」
私の両親の事なので苦笑いしながら早川さんが言った。
「そんなことはないですよ。忙しそうねって言ってたけど。」
「ご両親は今日俺と会ってるって知ってるの?」
「母親には私、話しちゃった。ごめんなさい。」
「ああ、いいの、いいの。それならちゃんとご挨拶しとかないといけないから。」
私はちょっと軽率だったかなと反省した。あまりにうれしくてつい母親に話してしまったのだ。
母親にしては珍しく大騒ぎして邪魔だてするような事はなかった。早川さんがいつもつかまらないので改築中はあまり快く思っていなかったのに。
考えてみれば不思議な事だ。彼の卒業大学が気に入っていたのかもしれない。
「来週の週末はちょっと会えないかもしれないよ。アポが詰まってて。」
「うん。」
私は頷いた。次のデートの話題に触れてもらえただけでも感激した。
「そのかわり、もし時間とれたら火曜か水曜の夜にでも会おう。」
自分でも顔がぱーっと輝いていくのがわかった。嬉しくてたまらなかった。