Immoral
長い長い式がやっと終わると順番に配属先ごとに別々に移動することになった。周囲がざわざわと騒がしくなったのを人事課長が注意をしていた。順番にホールを退場し移動が始まった。

トラベルの同期は全部で10名。大卒5名と専門学校卒が5名だった。私たちは徒歩10分圏内の本社まで歩いて移動した。移動後事業部の入社式があった。

やっとそれが終わり昼食になった。社員食堂は混んでいるという事だったので近くの店に行った。まとまった席にはつけなくていくつかに別れて席についた。

緊張の緩みと初めての経験の興奮で皆、饒舌だ。性格的にも初対面だと人見知りしてうまく話せないというタイプはいないようで同期で食べる初めての食事は気詰まりではなくあっという間に戻る時間になった。

午後は実際に職場を見て回りながら挨拶をするという事だった。

トラベル事業部のフロアは本社社屋の中のごく一部だけだった。1階の銀座支店と2階の一部にある営業管理課、5階の一部の人事総務課を見学した。

近辺には有楽町出張所という個所もあるという事だった。

銀座支店にはカウンターがありそこだけは旅行代理店らしさがあったがあとは普通のオフィスでこれといった特徴は感じられなかった。

1階はフロアが2分割されており、フロアの半分は本業の国際事業部が占めていた。もう半分がトラベルの銀座支店だ。
人事総務課長が説明していた。

「今はね、営業が帰って来てないからがらんとしているけど、営業がいる時はわさわさして忙しいです。ここは。」

この時は人がいない時間らしくガランとしていたが、出る人がいない電話がしつこく鳴り続けていた。隣の国際事業部はしーんとしていた。

人事総務課長から銀座支店の支店長の紹介があり挨拶をした。支店長が裏の方からカウンターをさして説明していた。

カウンターでは3人ほどの先輩が接客しながら忙しそうに動き回っていた。近隣の会社の制服を着た客らしき人が2人ほど席で待っていた。

表のカウンターは接客中なので私たちは裏から一瞬ちらりと見ただけで研修で使用していた2階の部屋に戻った。その部屋でオリエンテーションの続きを聞き翌日からの研修スケジュールの説明を受けた。

提出物や配布物のやり取りなどが終わると翌日のスケジュールと集合時間と場所の説明があった。

翌日から1週間品川にある研修施設で実務の研修をした後、新入社員の配属先決定。その後各個所でのOJTになるという事だった。

説明の後やっと長い一日が終わり私たちは解散した。帰りに同期の数人とお茶をした。皆昼食の時と同じようによくしゃべった。最後に翌日の集合と待ち合わせ場所を決めてからそれぞれの帰路についた。
< 15 / 74 >

この作品をシェア

pagetop