Immoral

1990へ

有楽町の改札を出て銀座方面に歩き出すと視界にセピアのフィルターがかかっていく気がした。

頭の中にランバダが流れてくる。交通会館の前を昭和通りに向かって歩く人の流れ。

マリオンの脇で地下道を出ると長い脚のジュリア・ロバーツとリチャード・ギアの巨大なポスターが出迎える。それを横目にガード下あたりの雑居ビルに急ぐ22歳の自分が見える・・・


「ママ?」

前を行く娘の声に景色が色を取り戻していく。

「ごめん。」

急いで追いつく。

「ずっと昔、毎朝ここを通って会社に通ってたんだよ。」

娘は大して興味もなさそうに「ふぅん」と言って目的の店に向かって歩き出した。
< 2 / 74 >

この作品をシェア

pagetop