Immoral
そんな事があったあと更に一週間ほど経った時のことだった。
その日、私は午後4ヶ所ほど回ってきたので帰社が17時過ぎになった。戻って席に着いたところで原田課長に呼ばれた。
びくびくしながら課長の席まで行った。
課長は一枚のレスカード(予約記録カード)を私に見せた。恐い顔をしている。私は黙ってレスカードを手に取った。
「よく見てみろ。なんて書いてある?」
原田課長の低い声が更に低くなった。
他の営業の男性もさりげなくこちらを見ている感じがした。私は何をやってしまったんだろうと恐る恐る顔を上げた。
「こっち来い。」
そういうと先に立って航空端末の前に立った。
「記録開いてみろ。」
原田課長が言った。
キーボードを触る手が震えた。リファレンスを入力して記録を出した。原田課長はもう一度レスカードを私に渡して
「名前を見てみろ。」
と言った。名前をよくみてみた。苗字のスペルが間違っていた。
『MATSUMURA』と入力すべきところが『MATSUURA』となってしまっていた。M(マイク)が一文字抜けていた。
「名前を間違えるなんて初歩中の初歩のミスだ。許されないぞ。名前間違えるような奴は旅行会社にいらない。お前は素人か?素人じゃないんだったら旅行会社の社員らしい自覚を持て。気をつけろ。」
私は声も出ないほど震え上がっていたので
「はい。」
と小さく言うのがやっとだった。そのまま固まっているとまた課長に怒られた。
「ネームチェンジのリクエストは俺がしておく。もういいから戻って仕事しろ。電話がなってるぞ。早く取れ。」
原田課長はいつものようにギロリと鋭い目で私を睨むように見て言った。
真っ赤な顔で席に戻った。先輩が小声で
「どうしたの?」
と聞いた。
「名前を間違えてしまって。一文字抜けてたんです。」
と私は答えた。先輩はただ
「ああ。」
と言って納得した。
確かに名前を間違えずに入力しなければいけないとは教えられていた。でもこの時までそれがいかに大事な事かわかっていなかった。
先輩は名前がたとえ一文字でもパスポートの表記と異なっていた場合、最悪のケースとしては別人とみなされ搭乗出来なくなったりする事がある。
事前に気づいて訂正しようとしてもステータスがタイトだったりするとノーネームチェンジがかかって訂正出来ない場合がある事を説明してくれた。
私は不安になり原田課長のところにもう一度行った。恐る恐る聞いた。
「あの、すみませんでした。それで名前の変更は出来たのでしょうか?」
課長は表情ひとつ変えずに
「リクエスト上げた。まあ大丈夫だろう。これからは気をつけろ。」
と言った。低い声が恐ろしい。目が怒っている。
「はい。気をつけます。」
やっと言って自分の席に戻った。
その日、私は午後4ヶ所ほど回ってきたので帰社が17時過ぎになった。戻って席に着いたところで原田課長に呼ばれた。
びくびくしながら課長の席まで行った。
課長は一枚のレスカード(予約記録カード)を私に見せた。恐い顔をしている。私は黙ってレスカードを手に取った。
「よく見てみろ。なんて書いてある?」
原田課長の低い声が更に低くなった。
他の営業の男性もさりげなくこちらを見ている感じがした。私は何をやってしまったんだろうと恐る恐る顔を上げた。
「こっち来い。」
そういうと先に立って航空端末の前に立った。
「記録開いてみろ。」
原田課長が言った。
キーボードを触る手が震えた。リファレンスを入力して記録を出した。原田課長はもう一度レスカードを私に渡して
「名前を見てみろ。」
と言った。名前をよくみてみた。苗字のスペルが間違っていた。
『MATSUMURA』と入力すべきところが『MATSUURA』となってしまっていた。M(マイク)が一文字抜けていた。
「名前を間違えるなんて初歩中の初歩のミスだ。許されないぞ。名前間違えるような奴は旅行会社にいらない。お前は素人か?素人じゃないんだったら旅行会社の社員らしい自覚を持て。気をつけろ。」
私は声も出ないほど震え上がっていたので
「はい。」
と小さく言うのがやっとだった。そのまま固まっているとまた課長に怒られた。
「ネームチェンジのリクエストは俺がしておく。もういいから戻って仕事しろ。電話がなってるぞ。早く取れ。」
原田課長はいつものようにギロリと鋭い目で私を睨むように見て言った。
真っ赤な顔で席に戻った。先輩が小声で
「どうしたの?」
と聞いた。
「名前を間違えてしまって。一文字抜けてたんです。」
と私は答えた。先輩はただ
「ああ。」
と言って納得した。
確かに名前を間違えずに入力しなければいけないとは教えられていた。でもこの時までそれがいかに大事な事かわかっていなかった。
先輩は名前がたとえ一文字でもパスポートの表記と異なっていた場合、最悪のケースとしては別人とみなされ搭乗出来なくなったりする事がある。
事前に気づいて訂正しようとしてもステータスがタイトだったりするとノーネームチェンジがかかって訂正出来ない場合がある事を説明してくれた。
私は不安になり原田課長のところにもう一度行った。恐る恐る聞いた。
「あの、すみませんでした。それで名前の変更は出来たのでしょうか?」
課長は表情ひとつ変えずに
「リクエスト上げた。まあ大丈夫だろう。これからは気をつけろ。」
と言った。低い声が恐ろしい。目が怒っている。
「はい。気をつけます。」
やっと言って自分の席に戻った。