Immoral
その日は予定が立て込んでいた。

夕方、外出先から戻ると17時を回っていた。早く翌日の準備にかかろうと席に着くと私と石原さんは支店長に呼ばれた。

事務用のテーブルに4つのパイプ椅子が置いてある打ち合わせのコーナーに座った。

「ちょっと待っててね。原田も来るから。」

そう言って支店長もちょっと席を外した。昨日先輩から聞いた話かなと思った。

支店長と原田課長が一緒に来て話が始まった。案の定、昨日先輩から聞いた話だった。

6月で一緒に営業補佐をしている2人の先輩が退職する。それについては後任は未定だが7月からは誰か1人か2人の補充はある。

営業補佐の業務については退職する先輩2人と新人の私しか知らないので今のうちにきちんと仕事を覚えておくようにという事だった。

支店長は

「入社したばかりでかわいそうだけれど業務全般は原田からもう一度OJTをするつもりで教わって、ワールドトラベルの締めなんかの事は石原さんとか山崎さんからちゃんと引き継いで出来るようにしておいて。」

と言った。そして原田課長と石原さんに向かって

「じゃあ引き継ぎとかあるだろうからこれから退職までに打ち合わせて彼女に教えてあげて。」

そう言って自席に戻っていった。

支店長が立ち去ると原田課長が

「そういう事だから川村も大変かもしれないけれどきちんと石原から教えてもらって。わからない事は俺が教えるからあまり不安がらなくても大丈夫だから。」

と言った。

「今日はあとはどんな感じだ?」

課長が石原さんに聞いた。

「明日のワールド分が20件位と他に申請書がちょっとあります。」

と石原が答えた。

「じゃあ山崎と二人で出来るか?」

「はい。やれます。」

石原さんが答えた。

「じゃあ今から川村には俺が指示した事をやってもらう事にするから。」

と原田課長が言って石原さんが

「わかりました。」

と答えた。3人とも席の方に戻り私は原田課長について指示を待った。

原田課長は自席に戻ると

「岩崎、島田。」

と他の営業に声をかけた。

「何か川村が出来そうな事あるか?」

と聞いた。

そんな風にして私は石原さんや山崎さんから教わったビザの申請書を作成する以外にも営業から直接いろいろ指示されて小間使いのような事をするようになった。
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