Immoral
どうやら私はピックアップしてはいけないチケットをピックアップしてきてしまったようだった。

特販チームの滝沢さんという先輩がピックアップして、その後成田空港で出発手続きの代行をする業者に持っていく分だったらしい。

そんな可能性がある事など思ってもみなかった。ただセンディングという言葉だけなんとなく知っていたつもりだけだった。

「すみませんでした。今からセンディングに持っていきます。」

と内藤さんに謝った。

「いいよ今更。明日の朝一分に変更してもらったから。チケット、ここに持ってきて。」

「はい。」

消え入りそうな声で返事をして電話を切った。私の席を通りがかった原田課長が何事かと電話の様子をうかがっていたらしい。電話を切ると

「どうした?」

と聞かれた。

「BTAでチケットアップしたんですけど特販分もあるってBTAの人に言われて一緒にアップしてきちゃったらセンディングにかける分だったみたいで・・・」

事情を説明するうちに泣きそうになってしまい、すみませんと言って急いでトイレに行った。トイレの中で深く深呼吸した。涙が出そうになるのを何とか堪えた。

呼吸を整えて気持ちを落ち着かせて席に戻った。内藤さんの所に持っていこうとチケットを入れておいたビニールケースを手に取るとそこに入っているはずのチケットがない。

慌てて机の上をがさこそ探しながら視線を上に上げると電話中の原田課長がチケットを指差しここにあるとゼスチャーしていた。

私は慌てて課長の側に行った。どうやら内藤さんと内線で会話しているらしかった。

課長は内藤さんに詫びつつ私の事も擁護してくれているのが会話からわかった。

電話が終わると私は課長に

「すみませんでした。気をつけます。」

と言った。

「まあ今回の事は仕方ないよ。センディングにかける事があるからアップしちゃいけないかもって気づかなかっただろ?教えてないもんな。」

と私に聞いた。

「はい、すみませんでした。」

「これは俺が明日ついでに持ってくからいいよ。」

とチケットをさして言った。

「いいんですか?ありがとうございます。」

と私は言った。

「近くを通るからいいよ。内藤にわざわざ明日足を運ばせなくてもいいし。」

「すみません。ありがとうございます。」

私は課長に感謝して席に戻り明日の準備を始めた。
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