Immoral
石原さんと山崎さんも大丈夫?と心配してくれた。
事情を説明すると
「内藤くんもああいうタイプだからね。あまり気にしない方がいいよ。」
「今までここではセンディングにかける事もなかったからね。仕方ないよ。BTAに持っていってって言われたんでしょう?私でもきっと持って帰ってきちゃうよ。」
と慰めてくれた。
仕事にかかるのが遅くなってしまったが2人の先輩が明日のワールドトラベル分は進めてくれていたので残りをやりはじめた。
先輩達はワールドトラベル分以外の国のビザについては基本的に営業が申請書を作ってから私達に渡してほしいというスタンスで仕事していた。もちろん急で忙しい時は申請書も作った。
でも私が課長から直接指示を受けるようになってからはビザに関わるすべての申請書などの必要書類は私が作成するという事に変わった。
残っているのは自分が受けた分で1人でも十分だったので先輩達には先に上がってもらった。
カウンターの先輩達と同期のマリはまだ残っていた。18時にカウンターを閉めてからその日の締めをするのでどうしても毎日残業になるという事だった。
それでもマリにいわせれば営業時間内に出来るはずの締めの準備を全くしないので、実際閉めてからが大変なのだという事だ。
先輩達に抗ってマリは1人で出来る限りその日の締めの準備をしているのだと言っていた。
営業はまだ全員残っていた。私は英文のレコメン(推薦状)をタイプしていた。
見本の通りタイプすればよかった。変えるのは名前とタイトルくらいだった。真剣に凝視しつつ指を動かした。スペルミスをすればやり直しだ。
集中してタイプしていると見本の脇に紙コップのコーヒーが置かれた。びっくりして顔を上げると課長がいた。
私は驚きつつ課長を見て、それからもう一度湯気の上がっているコーヒーをまじまじと見て
「ありがとうございます。」
と言った。課長は自分も同じものを飲みながら私ではなく私が打っている文面を見ていた。
「まだ終わらないのか?」
と聞かれたので
「これが終わったら帰ります。」
と答えた。
「そうか。」
とだけ言って課長は自席へ戻っていった。
ひそかに感動しつつ熱いコーヒーを飲んだ。課長の事を誤解していたかもしれない。
私にとってはまだ目の上のたんこぶ的存在に違いはなかったが今日の内藤さんとの電話では私が言いたくても言えなかった事を言って擁護してくれた。
そしてきちっと尻拭いもしてくれるようで島田さんや岩崎さんから聞いた通りだった。一口ずつコーヒーを飲むたび、その熱が私の頑なな課長への苦手意識を少しずつ溶かしていった。
事情を説明すると
「内藤くんもああいうタイプだからね。あまり気にしない方がいいよ。」
「今までここではセンディングにかける事もなかったからね。仕方ないよ。BTAに持っていってって言われたんでしょう?私でもきっと持って帰ってきちゃうよ。」
と慰めてくれた。
仕事にかかるのが遅くなってしまったが2人の先輩が明日のワールドトラベル分は進めてくれていたので残りをやりはじめた。
先輩達はワールドトラベル分以外の国のビザについては基本的に営業が申請書を作ってから私達に渡してほしいというスタンスで仕事していた。もちろん急で忙しい時は申請書も作った。
でも私が課長から直接指示を受けるようになってからはビザに関わるすべての申請書などの必要書類は私が作成するという事に変わった。
残っているのは自分が受けた分で1人でも十分だったので先輩達には先に上がってもらった。
カウンターの先輩達と同期のマリはまだ残っていた。18時にカウンターを閉めてからその日の締めをするのでどうしても毎日残業になるという事だった。
それでもマリにいわせれば営業時間内に出来るはずの締めの準備を全くしないので、実際閉めてからが大変なのだという事だ。
先輩達に抗ってマリは1人で出来る限りその日の締めの準備をしているのだと言っていた。
営業はまだ全員残っていた。私は英文のレコメン(推薦状)をタイプしていた。
見本の通りタイプすればよかった。変えるのは名前とタイトルくらいだった。真剣に凝視しつつ指を動かした。スペルミスをすればやり直しだ。
集中してタイプしていると見本の脇に紙コップのコーヒーが置かれた。びっくりして顔を上げると課長がいた。
私は驚きつつ課長を見て、それからもう一度湯気の上がっているコーヒーをまじまじと見て
「ありがとうございます。」
と言った。課長は自分も同じものを飲みながら私ではなく私が打っている文面を見ていた。
「まだ終わらないのか?」
と聞かれたので
「これが終わったら帰ります。」
と答えた。
「そうか。」
とだけ言って課長は自席へ戻っていった。
ひそかに感動しつつ熱いコーヒーを飲んだ。課長の事を誤解していたかもしれない。
私にとってはまだ目の上のたんこぶ的存在に違いはなかったが今日の内藤さんとの電話では私が言いたくても言えなかった事を言って擁護してくれた。
そしてきちっと尻拭いもしてくれるようで島田さんや岩崎さんから聞いた通りだった。一口ずつコーヒーを飲むたび、その熱が私の頑なな課長への苦手意識を少しずつ溶かしていった。