Immoral
そろそろイタリアンの店は出ようという事になった。ナオはデートまでもう少し時間を潰したかったようで

「もうちょっと付き合えない?」

と言われたのでカフェでコーヒーでも飲もうかという事になった。私も今日はデートのつもりでいたから別に時間は空いていたので全然構わなかった。

「課長もどうですか?」

とナオが聞いた。別に仕方ないから誘っておくという感じでもない。

「なに?おごってくれんの?」

と課長は冗談ぽく言った。

「いやぁ、私は課長がおごってくれるものかと。」

とナオがちゃっかり言った。

カフェに移動して飲み物を頼んだ。もちろん課長のおごりだ。

「やれやれ、俺達はデートまでのつなぎだな。」

課長は笑いながら自分と私の事をさして言った。

「課長は奥さんとどうやって知り合ったんですか?出会い。教えて。」

とナオがちょっと冷やかすように聞いた。

「いいじゃないか、そんなこと。どうでも。俺のは本社にいたんだよ。昔は隣にいたんだ。」

課長は言った。

「国際ですか?」

と私が聞いた。

「いや、昔はとなりはカスタマーサービスだったんだよ。」

と課長が答えた。

「で、唾つけといたってことですね。」

とナオが言った。課長は苦笑いしていた。

「お子さんはいないんでしたっけ?」

とナオが聞いた。

「種がないんだよ。」

課長は笑いながら答えた。

「聞いちゃいけなかったんですね。ごめんなさい。」

とナオは舌を出した。

「そのうち出来るでしょ。そんなに気にしてないから大丈夫だよ。」

と課長は軽く流していた。

「川村は今日は予定ないの?」

と課長が聞いた。

「ないです。って言うか無くなった。」

私は答えた。

「あーあ、言っちゃった。それタブーですよ、課長。」

とナオが言った。

「なんだ、ドタキャンか。」

と楽しそうに笑いながら課長は言った。

「そうですよ。ドタキャンされたから今こうして暇つぶししてるんじゃないですか。」

と私は開き直って言った。課長はまだ愉快そうにニヤニヤしていた。

「有楽町無くなったらナオ達はどうなるんですか?」

私はダイレクトに聞いてみた。仕事の話だ。有楽町営業所は7月いっぱいで閉鎖になる事は発表されていた。

「まだ決まってないよ。」

課長は答えた。決まっていたとしても私達にこんな場で話してくれる訳はなかった。

「横浜がいいな。」

ナオが言った。今より30分以上通勤時間が短くなると言った。

「えー、でもナオが横浜行っちゃったらつまんないな。」

と私は言った。
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