Immoral
「そしたらさ、朝礼が終わった後森沢さんが物凄い顔で怒っちゃって。」

 うん、うんと相槌をつきながらマリの話を聞いていた。

「支店長に『できません!』とか食ってかかっちゃって。」

「で?」

「もちろん支店長になだめられつつ注意されて席に戻ったけど、その後もずっとぶつぶつ文句言いっぱなし。ヒステリーで嫌になったよ。」

 マリは続ける。

「別に自分でデリバリーに行く訳でもないのにさぁ。行くのは私だっての!」

「ゴメンね。」

 と私は言った。

「なんで謝るの!仕事なんだから当たり前じゃん。ミズキのせいでもあるまいし。」

 更にマリは喋り続けた。

「それでね、さっきも支店長が来て『森沢さん、食事出たら?』って言ったわけ。ちょうど客もいなくてちょっと空いてる感じだったんだよ。

 そしたら『はい、でも忙しくなるといけないから・・・』とかって食事行こうとしないの。

 で、支店長も『でも森沢さんがいかないと高藤さんや富沢さんも行きづらいでしょ。混んで来たら俺も接客するから順番に行っておいで。』ってそこまで言ってるのにまだごちゃごちゃ言ってて。

 高藤さんも私もどうしようみたいな感じに顔見合わせてたんだけど結局高藤さんは森沢さんに気がねして『私は後でいくから富沢さんデリバリーあるから先行って。』って。

 私、めんどくさくなったから『じゃあお先に行かせていただきます。』って出てきちゃった。」

 マリは一呼吸入れた。

「ひえー、相変わらずめんどくさいね。」

 と私は言った。

「そうだよ。で、夕方営業が帰って来るとまたいつもの事で『忙しくてご飯も食べられなかったー。デリバリーも行かなくちゃいけなくなって。私達ばかり忙しくて裏にいる人はご飯食べられてうらやましい。』とかって言うに決まってる。

 同情して欲しいのかな?いつもそう言うんだよ。順番にいけない事もないのにさ。変だよ、あの人。」

 とマリは言った。私は多分陰でものすごく悪く言われてるんだろうなぁと嫌な気持ちになった。
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