Immoral
 支店長も

「ビザの事は川村が専任で一人では無理だから原田にヘルプにつくように俺から指示をしているんだから。

 ビザ取りのスケジュールまで口を挟まず彼女に任せなさい。それと営業は営業の仕事、ビザはビザの仕事であって俺達が稼いで来てやってるって言い方は間違ってるよ。」

 と諭すように古川さんに言った。私は悔しくて思わず涙が頬を伝って落ちた。古川さんは私の方をみて

「悪かったな。」

 と急に機嫌を取るように言った。所詮気が弱いタイプなのだ。私は悔しくて口も聞きたくなかったが

「私もすみませんでした。」

 と一応謝った。課長も「ぽん」と私の肩を叩き席に戻った。私は泣き崩れた化粧を直しにトイレに行って深呼吸した。

 仕事が終わったのは20時30分近くだった。課長のところに行って

「そろそろ終わりますけど何かまだありますか?」

 と一応聞いた。

「いや、もう上がっていいぞ。」

 と言った後で

「岩崎と飲むけど川村も来るか?」

 と誘われた。まっすぐ帰りたかったがせっかく課長が声をかけてくれたので思わず

「はい。」

 と返事していた。

「おい、岩崎、行くぞ。」

 課長が岩崎さんに声をかけた。

「はい、あと5分くらいで終わります。先行ってて下さい。」

 と岩崎さんが言った。

「お前の5分は長いからな。先行ってるぞ。早く来いよ。串翁でいいか?」

「串翁。はい、わかりました。行きます。すぐ行きますけど先にやっててください。」

 岩崎さんを残して私と課長は先に店に向かった。
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