眠れる森の聖女
じいちゃんの息子は食堂を営んでいた。学校にも通わせてくれて、実の息子のように俺をかわいがってくれた。

純粋に恩返しがしたくて、すすんで店の手伝いをしたし、勉強も頑張り過ぎない程度に頑張った。

魔法も、ベッドの中で結界を張ってばれないように訓練を続けている。

イケメン整体師の真似もすっかり板について、あのオタクだった俺が学校で人気者になってることに、我ながら驚く。恋人はできていないが、まだ12歳。焦ることはないし、この調子なら問題ないだろう。

恋人を作るより大魔法使いになる方が楽ってのは、さすがにオーバーだったな。

地道な魔法の訓練の成果で、俺の魔力はこの街の神父を遥かに上回っていた。でも、隣国にある神殿には優秀な魔法使いが集まっているというし、きっと上には上がいるのだろう。

そういえば数年前に、ずっと行方不明だった聖女が見つかって、もの凄い大魔法を放ったって噂になってたな。

チートってやつだな、羨ましい。

その噂の聖女が、神殿に戻らずそのまま近隣諸国を外遊していて、俺が住むこの街にもやってくると知ったのは、それから間もなくのことだった。

俺は自分の力を過信していたのだと思う。

『癒し会』とやらで、聖女が街全体を覆う治癒魔法を放ち、その力の大きさに感動した俺は、好奇心から聖女を鑑定しようとした。

人垣から少し距離を取って自身に結界を張り、聖女を鑑定した瞬間。聖女のすぐ近くにいた教皇が間に入ってきて目が合った。

即座に結界を解除してその場を離れたが、教皇の鋭い視線は明らかに俺を追っている。

ばれた、しくじった。でも大丈夫。身元がばれたわけじゃないし、きっと大したことない。

聖女に危害を加えようとしたわけじゃないし、絶対に何も起こらない。

そう思い込もうとしたが、不安は現実のものとなった。

数日後、俺が通う学校に電撃訪問してきた聖女様御一行に、俺は名指しで案内役に使命されたのだった。
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