眠れる森の聖女
(教皇)あざとかわいい
聖女が学校に編入して諸々落ち着いた頃、ダニエリオからじっくり話を聞くことができた。
前世で聖女と直接の関わりはなかったものの、ふたりは極身近で生活していて、おそらく死亡した時期も重なっており、転生後の様子も酷似していた。
何より彼が放つ魔力は紛れもなく神聖魔法を帯びており、召喚により転生したことは間違いないと思われる。
そして、聖女ほどではないがその魔力量は膨大で、転生後の過酷な環境によるものなのか、魔動力と魔力効果の数値が私を上回るレベルに達していた。
これらのことから、ダニエリオが聖女と共に召喚されたのは、疑う余地がないと判断できる。
彼の養父母は彼が転生者であることを知っており、それを隠す必要はないと言ってくれているようだが、ダニエリオ本人が公にすることを躊躇しているため、とりあえず今まで通りの生活を続けている。
「ア!ジョニデ!キテタノー?オハヨ!」
正確に言えば今まで通りではない。
聖女が会話の練習を始めてからは完全に通訳魔法をオフにしたため、日常生活に支障がないようダニエリオをそばにおきたがった。
ダニエリオを私達の宿に招き入れる算段をしていたのだが、
「アキラキュン、カゾキュ、ワキャレル、ダメ。ワタチ、イキュ」
と聖女が言い出したため、侍女のリアマリアとふたりで、ダニエリオの家で生活している。
リアマリアは私の故郷の教会で修道女をしていた娘だが、聖女の成長に伴い、今ではなくてはならない存在となっている。
聖女が言葉の勉強を始めてまだ3ヶ月程だが、既にカタコトで会話ができるのだから驚く。
初めの頃はダニエリオとふたりがかりで何冊もの本を翻訳し、単語や慣用句、文法等を覚えることに集中していたようだった。
ふたりの集中力は凄まじく、その頃の聖女は放っておくと気を失うまで勉強をしていたし、ダニエリオはそんな聖女に気づきもせずに隣で延々と翻訳をしているのだから、呆れてしまう。
転生者とはみんなこんなものなのだろうか。いや、前の聖女はそんなことなかったので、多分このふたりが異常なのだろう。
「マリアチャーン、キョーノ、デジャート、ワ、ナニカニャー?」
会話の練習を始めて間もないせいなのか、発音はまだまだのようだ。舌足らずな聖女の発音はなんとも可愛らしく、この場に王子がいたら、さぞ喜んだことだろう。
そろそろ、王子からまた手紙が届く頃だろうか。
この4年の間に、王国内部は荒れていた。
王妃と決着をつけると言って王国に向かった王子だったが、問題は王室内にとどまらず、国を揺るがす規模にまで発展しているのかもしれない。
そのせいか、最近王国からの刺客がじわりじわりと増えていて、王子を待たずに王国入りするという選択肢は、私の中で完全に消えていた。
平和な時間は長い方がいい。あえて嵐の中に飛び込む必要はないだろう。
前世で聖女と直接の関わりはなかったものの、ふたりは極身近で生活していて、おそらく死亡した時期も重なっており、転生後の様子も酷似していた。
何より彼が放つ魔力は紛れもなく神聖魔法を帯びており、召喚により転生したことは間違いないと思われる。
そして、聖女ほどではないがその魔力量は膨大で、転生後の過酷な環境によるものなのか、魔動力と魔力効果の数値が私を上回るレベルに達していた。
これらのことから、ダニエリオが聖女と共に召喚されたのは、疑う余地がないと判断できる。
彼の養父母は彼が転生者であることを知っており、それを隠す必要はないと言ってくれているようだが、ダニエリオ本人が公にすることを躊躇しているため、とりあえず今まで通りの生活を続けている。
「ア!ジョニデ!キテタノー?オハヨ!」
正確に言えば今まで通りではない。
聖女が会話の練習を始めてからは完全に通訳魔法をオフにしたため、日常生活に支障がないようダニエリオをそばにおきたがった。
ダニエリオを私達の宿に招き入れる算段をしていたのだが、
「アキラキュン、カゾキュ、ワキャレル、ダメ。ワタチ、イキュ」
と聖女が言い出したため、侍女のリアマリアとふたりで、ダニエリオの家で生活している。
リアマリアは私の故郷の教会で修道女をしていた娘だが、聖女の成長に伴い、今ではなくてはならない存在となっている。
聖女が言葉の勉強を始めてまだ3ヶ月程だが、既にカタコトで会話ができるのだから驚く。
初めの頃はダニエリオとふたりがかりで何冊もの本を翻訳し、単語や慣用句、文法等を覚えることに集中していたようだった。
ふたりの集中力は凄まじく、その頃の聖女は放っておくと気を失うまで勉強をしていたし、ダニエリオはそんな聖女に気づきもせずに隣で延々と翻訳をしているのだから、呆れてしまう。
転生者とはみんなこんなものなのだろうか。いや、前の聖女はそんなことなかったので、多分このふたりが異常なのだろう。
「マリアチャーン、キョーノ、デジャート、ワ、ナニカニャー?」
会話の練習を始めて間もないせいなのか、発音はまだまだのようだ。舌足らずな聖女の発音はなんとも可愛らしく、この場に王子がいたら、さぞ喜んだことだろう。
そろそろ、王子からまた手紙が届く頃だろうか。
この4年の間に、王国内部は荒れていた。
王妃と決着をつけると言って王国に向かった王子だったが、問題は王室内にとどまらず、国を揺るがす規模にまで発展しているのかもしれない。
そのせいか、最近王国からの刺客がじわりじわりと増えていて、王子を待たずに王国入りするという選択肢は、私の中で完全に消えていた。
平和な時間は長い方がいい。あえて嵐の中に飛び込む必要はないだろう。