眠れる森の聖女
(教皇)世界同時生配信
聖女がダニエリオの家で寝泊まりするようになった頃から『あそこの息子は転生者らしい』という噂が流れ始めた。
学校内で聖女とダニエリオが前世の言葉で会話するのを見かけた生徒がいたのかもしれない。
と言っても、聖女が転生者であることは知られていないので、ふたりの会話を聞いて転生者だと連想する者は少ないはずだ。それに、緊急時に備えてダニエリオには通訳魔法を使用している、という体になっていた。
どうやら、聖女が店に頻繁に出入りするようになったことで客を奪われた同業者が、その情報を元にして悪意ある噂を流したらしい。
ダニエリオの両親は全く噂を気にせず、完全無視で否定も肯定もしなかった。
「元々梨花子さんが言葉を覚えたら僕が転生者だってことを公表する約束だったし、中途半端に噂されるより公表してはっきりさせた方がいいのかな、、」
「あーあの約束はもう気にしなくていいよ?一緒に住むようになってたっぷり魔法の話できるようになったし、わざわざ自分から転生者だなんてばらす必要ないよー」
ダニエリオは自分のせいで少なからず店に迷惑がかかっていることを気にしている様子だが、私も聖女と同意見で、わざわざばらさなくていいと考えていた。
そもそも、店への嫌がらせはダニエリオのせいではなく、聖女がなんの配慮もせず店に出入りしているせいなのだ。
まあ、客のほとんどは噂を気にしていなかったし、ダニエリオが転生者だとしてもやはり気にしないという人ばかりだったので、とりあえず静観することにした。
しかし、聖女が行方不明になってバタバタしていた半月程の間に、転生者を毛嫌いする輩が、物理的な嫌がらせをするようになった。店の壁に落書きや貼り紙をしたりゴミを撒き散らしたり、、これは流石に放っておくわけにはいかない。
「魔法で罠を張ることはできると思うけど、この手の人達っていくらでも沸いてくるよねえ。だから根本的な解決が必要だと思うの。そもそも、転生者に悪いイメージがあるってのが、既に間違いじゃない?」
また聖女が面倒なことを考えているようだ。
先代の聖女の教えでは、教皇とは聖女を正しく導く存在であるとのことだったが、この聖女は制御不能だ。
聖女が異空間から戻ったあと「放っておくとまたやりますよ?」とダニエリオに釘を刺されたが、どうしても聖女に説教をする気分にはなれなかった。
完全に聖女の気配が消えた時、生きた心地がしなかった。
こんなにも気苦労が絶えないというのに、聖女のいない世界に価値を見出だすことができないと感じている自分に、我ながら驚いた。
「ねえジョニデ!白くて、ヒラヒラ~って感じの、聖女っぽい衣装!準備してもらってもいいかな?」
「はいはい、かしこまりました」
畏敬の念とも違うこの感情をどう表したらいいのか、、どうも答えが見つからない。
学校内で聖女とダニエリオが前世の言葉で会話するのを見かけた生徒がいたのかもしれない。
と言っても、聖女が転生者であることは知られていないので、ふたりの会話を聞いて転生者だと連想する者は少ないはずだ。それに、緊急時に備えてダニエリオには通訳魔法を使用している、という体になっていた。
どうやら、聖女が店に頻繁に出入りするようになったことで客を奪われた同業者が、その情報を元にして悪意ある噂を流したらしい。
ダニエリオの両親は全く噂を気にせず、完全無視で否定も肯定もしなかった。
「元々梨花子さんが言葉を覚えたら僕が転生者だってことを公表する約束だったし、中途半端に噂されるより公表してはっきりさせた方がいいのかな、、」
「あーあの約束はもう気にしなくていいよ?一緒に住むようになってたっぷり魔法の話できるようになったし、わざわざ自分から転生者だなんてばらす必要ないよー」
ダニエリオは自分のせいで少なからず店に迷惑がかかっていることを気にしている様子だが、私も聖女と同意見で、わざわざばらさなくていいと考えていた。
そもそも、店への嫌がらせはダニエリオのせいではなく、聖女がなんの配慮もせず店に出入りしているせいなのだ。
まあ、客のほとんどは噂を気にしていなかったし、ダニエリオが転生者だとしてもやはり気にしないという人ばかりだったので、とりあえず静観することにした。
しかし、聖女が行方不明になってバタバタしていた半月程の間に、転生者を毛嫌いする輩が、物理的な嫌がらせをするようになった。店の壁に落書きや貼り紙をしたりゴミを撒き散らしたり、、これは流石に放っておくわけにはいかない。
「魔法で罠を張ることはできると思うけど、この手の人達っていくらでも沸いてくるよねえ。だから根本的な解決が必要だと思うの。そもそも、転生者に悪いイメージがあるってのが、既に間違いじゃない?」
また聖女が面倒なことを考えているようだ。
先代の聖女の教えでは、教皇とは聖女を正しく導く存在であるとのことだったが、この聖女は制御不能だ。
聖女が異空間から戻ったあと「放っておくとまたやりますよ?」とダニエリオに釘を刺されたが、どうしても聖女に説教をする気分にはなれなかった。
完全に聖女の気配が消えた時、生きた心地がしなかった。
こんなにも気苦労が絶えないというのに、聖女のいない世界に価値を見出だすことができないと感じている自分に、我ながら驚いた。
「ねえジョニデ!白くて、ヒラヒラ~って感じの、聖女っぽい衣装!準備してもらってもいいかな?」
「はいはい、かしこまりました」
畏敬の念とも違うこの感情をどう表したらいいのか、、どうも答えが見つからない。