眠れる森の聖女
「ダニエリオは以前から転生者だと噂されていたそうだが、神聖魔法のことまで広まったのは何故だ?」

「眠った聖女を教会で保護していたので、ダニエリオの魔法を教会の者が目にしてしまい、一時騒ぎになりました」

「なるほどな。実はひと月程前から『聖女を解放せよ』と脅迫じみた書状がサザランド共和国から届くようになり、最近ではそれにダニエリオのことも加わるようになっているのだ」

「ただ滞在しているだけの聖女を解放せよとは穏やかではないですね」

「まあ後ろ暗いことは何もしていないし、聖女を狙った襲撃が増えていると知りながら、追い出すような真似をするつもりもないので、そこは安心して欲しい」

「私が長く居座ったせいでそんなことに、、」

「聖女、王子が王国から戻ってこないのは、戻れる状況ではないからです」

「え?どういうこと?レオ様大丈夫なの?」

「王子は無事ですが、今王国は戦争の危機に直面していて、王子はそれを食い止めようと必死で守りを固めているはずです」

「戦争、、」

「サザランド共和国は王国の有力貴族と通じているので、脅迫してきたということは、いよいよ戦争に向けて動き出したのでしょう」

「そんな、、私のせいで戦争が?」

「いや、決して聖女のせいでは、、」

「教皇の言う通りだ。元々この国は狙われていて聖女のことは単なる口実に過ぎない。ただダニエリオが聖女と同等の力を持つとわかれば、それが更なる口実となり、戦争の回避がより難しくなるかもしれないな、、」

「解放などとそれらしい言い回しをしてはいますが、敵は聖女やダニエリオの力が戦争に利用できると算段してるのかもしれません」

「え?私を戦争に利用?」

聖女が眉間に皺を寄せた。まずい、聖女が何か良からぬことを考えている気がする。戦争の話を聖女にしたのは完全に間違いだった。

「王国と不可侵条約を締結してあるので大丈夫だ。我々が攻撃を受ければ全面的な協力を約束されている。聖女やダニエリオがどうにかなる心配はないだろう」

「でも戦争が始まったら、少なからず犠牲者が出ますよね?」

ああ駄目だ、聖女の目が据わっている、、

「それはそうだが、、もしもの時は最小限の被害で済むよう、万全の体制を整えてある」

「最小限、、ねえ」

「陛下!これ以上は子供の前ですので、、」

「教皇、どうしたのだ?、、まあそうだな、戦争の話はよしておこう」

聖女が何やらブツブツ呟いている、、もう手遅れかもしれない。
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