眠れる森の聖女
「ダニエリオ。本来なら聖女の対となる者を我が国に迎えられるのは名誉なことであるというのに、こんなことになってしまい申し訳ない」

「いえ、とんでもありません」

「ご両親と共に、私も喜んで身元の保証をさせてもらうよ」

「ありがとうございます」

「この先どうするのか、考えているのかな?」

「具体的には何も。今のところ教会に勤めたいとも思わないし、城で兵士になりたいとも思えなくて」

「何か他にやりたいことがあるのだろうか?」

「両親みたいに幸せな家庭を持ちたいとは思っています。でも最近は、聖女様や教皇様と魔法について話すのが、単純に楽しいと感じます」

「幸せな家庭か、それはいいな。うん、実にいい。ダニエリオ、励めよ」

「はい!ありがとうございます!」

ここにきて、ようやくダニエリオが笑顔を見せる。この国にいる限り、ダニエリオの魔力が悪用されることはないだろう。この王に任せておけば安心だ。

問題があるとすれば、それは聖女だ。

「正直今は微妙な時期なので難しいが、落ち着いたらゆっくりと話を聞いてみたい。また会おう」

「はい!」

「教皇ともう少し話したいのだが、隣の部屋に菓子を用意してある。聖女とダニエリオはそこでしばらく待っていて欲しい」

聖女達が退室し人払いをして、王とふたりになる。

「聖女の魔力が人智を越えているのは先日の祝福の魔法だけで十分理解できるのだが、、実際のところ、聖女とダニエリオの魔力は危険な物なのだろうか?」

「ダニエリオに関しては本気で魔力を使ったところを見たことはありませんが、彼は数年の間、森の中で身を守るために多種多様な攻撃魔法を駆使しており、能力・経験において、私では足元にも及ばないレベルだと思われます」

「教皇でも!?」

「はい。そして聖女は魔力量・魔動力・魔力効果の全てにおいてダニエリオを上回っており、必要とあらばどんな攻撃魔法でもすぐに習得できる器用さがあります」

「万が一でも、敵に聖女達の力が渡ることがあってはならないのだな」

「襲われ続けたことでありとあらゆる対策はしていますが、絶対とは言い切れません。今後も万全の体制で聖女達をお守りします」

「ああそうだな。事態が落ち着くまで聖女達が城に滞在してくれると少しは安心できるのだが、、」

「恐らくそれは拒否されるかと、、」

「あの様子では、そうだろうな」

「特に聖女は扱いが難しくほとほと手を焼いています。ですが、聖女が聖女で本当に良かった」

「ん?それはどういう意味かな?」

「聖女が魔王なら、今頃世界は滅びていたという意味です」

「魔王、、」

「ある意味、聖女は魔王です」

「、、教皇。少し疲れているようだな」

「はい、そうかもしれません」
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