眠れる森の聖女

(王子)はらわたが煮え返る

最後に聖女を見たのは半年前。

今目の前に立つ聖女は間違いなくあの時の女の子だが、ちょっと大きくなり過ぎているような気がする。

あの時は5~6歳に見えたのに、今は年相応の10歳くらいに見える。俺の勘違いか?とも思ったが、サルがあの時より小さく見えるのは、聖女が大きくなったせいだろう。

いくら子供だからって、たった半年でこんなに大きくなるものなのか?30センチは伸びてないか?

「※※※※、※※※※※※※※※※※※※※?」

聖女が何か言っている。心なしか顔を赤くしているようだが、照れているのか?かわいいな。

そういえば、聖女が服を着ている。しかも、さっきから聖女が口に運んでいるのはチョコレートか?

一体どういうことだ?

視界の端に教皇が肩を揺らしているのが目に入った。笑ってる?教皇が何かしたというのか?一体何をしたんだ?何故報告がない?

どいつもこいつも、人のことを馬鹿にしやがって、、

もううんざりだ!早く城に帰りたい!いや、城じゃなくていい、風呂に入ってベッドで眠らせてくれ!

、、まずい、危うく取り乱すところだった。

本当に勘弁して欲しい。教皇が何を考えてるのか俺には全く理解ができない。

王国からの忠告を無視してわざわざ神殿から呼び寄せたというのに、いざ来てみたら何をするでもなく、ひたすら祈り続けるのみ。祈るだけなら神殿でやってりゃ良かったじゃないか!という言葉を、何度飲み込んだかわからない。

だが、祈るだけの教皇と焦っているだけの自分が、等しく何も成果を出せていないことに気づき、ならば焦るだけ無駄だと悟った。聖女が姿を現すまではただ待つことしかできないと理解してからは、かなり気持ちが楽になった。

教皇は無駄に教皇ではないと、少しばかり見直していた矢先にこれだ。

教皇は明らかに聖女と接触してるじゃないか。

ただ待つしかないだと?待つという言葉の意味には、服やチョコレートを渡すことが含まれているというのか?

ふざけるな!この狸じじいめ!油断も隙もあったもんじゃない!

再び取り乱しそうになり、俺は怒りを静めるため、大きく深呼吸した。

今はとにかく、言葉が全く通じない聖女をどうするか考えなければならないだろう。

久し振りに頭が痛い。
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