眠れる森の聖女
もう一回、私を指差す。

「聖女?」頷く

体の前で手首を合わせて、捕まるを表現するが伝わるか?

「捕まえる、か?」

イエース!大きく頷く。

「俺達が聖女を捕まえると思ってるのか?」

激しく頷く。

「なんで?」

って、ジェスチャーじゃ説明無理じゃん!やっぱ私も話せないと無理だ。

なんかすんごい疲れちゃったわー。私は結界に両手をついて呟いた。

「燃えたよ、真っ白に、燃え尽きた」

「え?燃えた?何が?」

嘘?通じた?やった!やったよ!どさくさに紛れてレオ様にハグしたい!

と思った瞬間、結界がシュッ!って消えた。結界に手をついていた私はコケそうになってレオ様に助けてもらったけど、ハグはしなかった。

言葉が通じない問題は、すったもんだの末、無事解決した。

結界の向こうに行くかどうか問題も、あっけなく解決した。

レオ様が持ってきたチョコレートの缶は、私が大切に抱えている。

私、なんとなくわかっちゃったんですけど。

魔法って、強く願ったり、必要に迫られたりすると、発動しちゃう系なのかな?考えるな、感じろ的な?言葉じゃなくて感情に魔力が乗るとうまくいくっぽい?

だからあんなに練習してるのに守護霊を呼ぶ呪文は成功しないんだわ。あれ、完全に、あの呪文を言いたいだけだもんな。

でもいいんだ。実は最近、サルに芸を仕込んだの。

私があの呪文を叫ぶと、サルがそれっぽく棒の先から飛び出す感じでジャンプしてくれるのよ。

あれ、すっごく満たされる。

多分だけど、サルはだいぶ前から私の言葉がわかってると思う。

サル、本当大好き。
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