眠れる森の聖女
「聖女に雷魔法は必要ないよな?」

今更ではあるが、疑問に思ったので、夕飯を食べながら聞いてみた。

「教皇が攻撃魔法を使えるのはなんとなく理解できるんだ。いざという時に聖女を守る必要があるからな」

「これまでの聖女はそれほど魔力が多くなかったのでお守りする必要がありましたが、ご自分で身を守れるのならそれに越したことはないですよね」

聖女が激しく頷いて同意を示している。教皇といい聖女といい、何か怪しく感じるのは俺の思い違いだろうか。

俺の身内が聖女を狙って影を放った手前、自衛のためと言われれば納得せざるをえない。

「だが自衛のためなら、聖女は結界を瞬時に張ることも可能だよな?」

「あ!結界といえば!さっき影の人達を捕まえた時に、空気を抜いて弱らせるって言ったじゃない?」

随分と強引に話をそらされた。

「ああ、そんなこと言ってたな」

「あれ、完全にその場の思いつきだったんだけど、結界内の空気を抜くって可能?」

教皇がしばらく考えて答える。

「空気の出入りを完全に封じて密封状態にすれば、結界の規模によっては時間がかかりますが、息はできなくなると思います」

「うーん、そういう消極的な感じじゃなくて。結界内を真空状態にするとか、、それこそ、敵を結界内に閉じ込めた状態で雷魔法を炸裂させるとかできるかな?って話なんだけど。それができたら、結界って無駄の少ない効率的な攻撃を可能にするよね?」

この少女は一体何を言っているのかな?

さっきから、ウキウキ顔で効率的な虐殺方法を語っているように感じるのは、何かの間違いだよな?聖女だよな?少女の皮を被った魔王じゃないんだよな?

「なるほど、、それは確かに興味深いですね」

って、おーい!教皇!お前もか!

「いやいや、レオ様。私、聖女だから!魔法の可能性を探ってるだけだから!その顔、傷つくから、本当やめよう?」

もう嫌だ、この人達。ついていけない。
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