【短編】ワタシノコイガタリ①
グラウンドから視線を離さない彼女は私が一目惚れした人を見ていた。
真剣な顔で相手選手を躱しているその姿に何度も胸を高鳴らせるけれど、名前は知らない。何組なのかも。実際、こんなかっこいい人を今日初めて見た。
「確かにかっこいいよ。見た目はね。でもあまりいい噂聞かないから……先輩もアイツだけは注意して欲しいって……レンカごめんね」
黙るばかりの私に逆に気を遣わせて謝るマリカ。
そんな彼女に申し訳ないと思った。
いい噂聞かない、か。
確かにチャラそうだもん。ううん、チャラい。
ただ、サッカーが好きなのはこの試合を見て十分に伝わってくる。彼がサッカーを好きなように、私も今は真っ直ぐに彼を好きになってしまった。
この心臓の速さが物語ってる。
「マリカありがとう。それでも今の私はこの人が好きみたいなんだ」
「レンカ……」
「てことで、私あとで告ってくる!」
「――!!」
「クズ野郎がなんだってんだ。逆にかかって来いって感じだわ!なんなら振られる覚悟で言ってやるわ!」
「ははっさすがレンカって感じだわ!――潔くてカッコイイよほんと。憧れるわレンカのそーゆーとこ」
「ん?なんか言った?『さすがレンカって感じだわ』の後」
「んーん!なーんも言ってない!」
その後は2人して思いきり声援とラブコールを送り続けた。試合は見事私たちの高校が勝った。