ファーストキスは俺のもの。


ここで待っていたのだろうか。


片手を後ろに回し、ピシッと立っている直田くんは黒縁メガネをクイッと持ち上げた。


「ちょっとよろしいですか?」

「・・・・・・はい」



直田くんの後ろをついて行くと、体育館裏に着いた。


中のステージで劇でもやっているのか音楽や笑い声が聞こえてくる。


直田くんは私を振り返った。


「白川さん、好きです。僕とお付き合いしてください」


もう何回聞いたセリフだろう。


毎回丁重にお断りしているけど、毎回何も無かったかのように同じように告白される。


「直田くん、ごめんなさい。直田くんとは付き合えません」


私もいつものように返した。


これでいつも『そうですか。ではまたの機会に』と言って去って行く。


今回もそうだろう。

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