図書室の人魚姫
青年は迷いもなく近づいて、抱きしめてくれる。昔絵本で見た王子様とお姫様もこんな風だったな、と思い出す。




枯れ果てた夢。



「ねぇ都市伝説知ってる? ――知らない図書室。知らない人魚姫」

「……うん。だって有名だし」

「泡となって消えた姫は転生して、美しい青年となった。知らない図書室は、魔女の魔法で創られた幻想」

「そんな夢みたいな話、あるわけな――」


「その、信じられない幻想の中に《真実》も存在するんだよ」


「私、特別な人じゃないよ」

「ちがうよ。僕にとっては、すごく特別だよ《王子様》」
< 4 / 5 >

この作品をシェア

pagetop