内緒で三つ子を産んだのに、クールな御曹司の最愛につかまりました【憧れシンデレラシリーズ】
そういえば、その日の麦はいつも以上にぐずぐずしていた。園での外遊びの最中に転んだらしく、膝に擦り傷を作っていたのだ。
帰るときに抱っこをせがんできたけれど、ひとり抱っこしてしまうと他のふたりの安全が確保できない。だから、どうにかベビーカーに乗ってくれないかと苦心していたら、確か秋が自分から後ろの席に乗ったのだ。
その日は秋人が前に乗る番だったのに。
『ムギ、まえのって』
そう言ってくれた時の秋人の顔が、とても頼もしく見えたのを今になって思い出す。おかげで麦も機嫌を直し、無事に家に帰ることができたのだ。
なのに私がすっかり忘れて麦人をを前に乗せてしまったから、秋人としては納得がいかないのだろう。
あぁ……一番ダメなの、私だった。楓人ですらちゃんと覚えていたのに……。
「ごめん、秋。こないだも後ろ乗ってくれたんだったね。忘れてたママが悪かった。でもさ、蹴るのはダメだよ」
秋人の目から、ぽろっと大粒の涙がこぼれる。
……泣かせてごめん。そう思うと、私まで鼻の奥がツンとする。