内緒で三つ子を産んだのに、クールな御曹司の最愛につかまりました【憧れシンデレラシリーズ】

「美味しいです、この茄子」
「だろう? きみなら気に入るんじゃないかと思った」

 夕食時、ダイニングテーブルに並んだのは茄子のフルコース……ではなく、ひき肉を使ったカレーに揚げ茄子がたっぷり乗った逸品。近所のインド料理店からデリバリーしてもらったものだ。

 ライスの代わりに頼んだもちもちのナンに、スパイシーなカレーがよく合う。

「念願の同棲初日は、互いの好物である茄子が乗ったカレーを仲良く食べた。婚約者らしいエピソードがひとつ、出来上がったな」

 仕事人間の彼らしい考え方だ。ノルマをひとつクリアしたような言い方がおかしくて、思わずふふっと笑う。

「そうですね。やっぱり、適当な嘘をつくよりもこうして実際に同じ時間を共有する方が、エピソードにも説得力が増します」
「彼女の眼鏡にカレーが跳ねていました、なんて。作り話じゃ思いつかないからな」
「えっ? 跳ねてます? 早く言ってくださいよ……!」

 そんなにガツガツ食べたつもりはないのに恥ずかしい。

 慌てて眼鏡をはずしてみるが、どの角度から眺めてもレンズに汚れた部分はない。

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