内緒で三つ子を産んだのに、クールな御曹司の最愛につかまりました【憧れシンデレラシリーズ】
「TPOに合った服装……ただし露出は控える? なんだこれ」
頭上から、私のメモを読み上げる聞き慣れた声がして、ドキッと鼓動が跳ねる。
慌ててメモを閉じ顔を上げると、呑気に微笑む霜村くんがいた。手には丼が乗ったトレーを持っている。
「お、お疲れ様……! 今からお昼?」
「ああ。パパッとこれ食ったら外回り。今日も頑張りますよーっと」
彼は空いていた隣の椅子を引いて、テーブルにお盆を置く。丼の中身は食べ応えのありそうなかつ丼で、さっそく「いただきます」と手を合わせている。
メモの内容はとくに不審に思われなかったようなので、彼に気づかれぬようホッと息をついた。
「なぁ、噂で聞いたんだけどさ……羽澄と降矢専務が婚約したって、ガセだよな?」
一旦落ち着いていた鼓動が、ドックンと跳ねる。小峰さんの反応も怖いが、霜村くんほど親しい人への報告もとても難しく、未だに実現できていなかった。
噂で知られるのなら、自分の口からもっと早くに言っておくべきだったかな……。
私は龍一さんと作り上げた架空の物語を頭の中で反芻すると、覚悟を決める。
「そ、それが……本当、なんだよね」
大きなカツを口に入れようとしている霜村くんの横顔を見つめ、そう言った。彼の持つ箸から、カツがボトッとご飯の上に落ちる。