内緒で三つ子を産んだのに、クールな御曹司の最愛につかまりました【憧れシンデレラシリーズ】
「真智」
食堂の喧騒に紛れ、低い声が凛と響いた。……龍一さん?
こんな場所に彼が現れるとは意外で、ドキッとしながら声のした方を振り向く。
「お、お疲れ様です……」
普通に挨拶がしたいのに、ぎこちなく目を逸らしてしまった。家でも会う人と会社で顔を合わせた時って、どんな態度でいたらいいのかわからない。
「そちらの彼だが、具合が悪いのか?」
「あっ、そうなんです。急に様子がおかしくなって」
そう言って霜村くんの顔を覗き込もうとしたら、パッと顔を上げた彼は自分の頬を両手でぱちんと叩き、お盆を持って立ち上がった。
「ご心配には及びません! ちょっと、メンタルやられてただけで……おふたりの邪魔になってしまうので、俺、別の席で食事をしますね」
口を挟める隙もないほど早口で言い切った霜村くんに、私も龍一さんも圧倒される。彼は最後に深々と頭を下げ、カツ丼の乗ったお盆を片手にこの場を離れていった。
その姿を見送りふと我に返った瞬間、龍一さんと目が合う。
微かに細められた目に私を責める色が浮かんでいる気がして、心臓が縮こまった。