内緒で三つ子を産んだのに、クールな御曹司の最愛につかまりました【憧れシンデレラシリーズ】
混雑する車両内に滑り込みフウッと息をつくと、まだ朝なのにフルマラソンを完走したかのような達成感に包まれる。
あの三人を今日も保育園にひとりで送り届けた自分、えらいぞ……。
自分で自分を褒めてやり、今度は頭を仕事脳に切り替える。
私の職場は、大手文具メーカー『Sparcil』本社のステーショナリー開発部。
本当はより上層部へ近い経営戦略部への昇進が決まっていたのだけれど、妊娠を機に自分から辞退した。
三つ子を育てながら慣れない仕事をすることになるのは不安だったし、いずれ帰国する子どもたちの父親と近い部署で働くのには抵抗があったからだ。
そもそも、私は目立つことが嫌いな性格。次期社長との結婚なんて、たとえ〝偽装〟だとしてもうまくいくはずがなかったのだ。
だからといって彼を恨んでいるわけではないので、今後も会社の歯車として、文具の開発に真摯に向き合うだけ。
そうして得たお給料で三つ子の教育資金をひたすら貯めるのが、当面の人生の目標だ。